A. 自社プラットフォーム「αU metaverse」を構築し、バーチャルとリアルの線引きをなくす体験を強化していくという壮大な取り組み
携帯キャリアによるweb3投資が加速しています。昨年2022年には、ドコモがweb3に6,000億円を投資するというニュースで注目を集めました。そんな中、2023年3月7日にKDDIもweb3の新サービス「αU」を発表し、1,000億円の大型投資を計画していることが明らかになりました。
KDDIはこの「αU」という名の下、5つのサービスを提供開始することを発表しており、壮大なプロジェクトとなっています。今日はその5つのサービスを紹介したいと思います。
KDDIのこれまでの取り組み
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KDDIはこれまでもweb3領域に積極的な取り組みを行っていました。2020年5月には、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を組成し、渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」を提供しています。
これはバーチャルSNS「cluster」内に作られたもので、主にエンタメイベントに参加するための場というものでした。これまであらゆる芸能人のアバターが登場するLIVEトークイベントなどが実施されました。
また、2022年10月にはさらに発展させて、リアル空間の環境をバーチャル空間上に再現するデジタルツインに、実際の渋谷の写真や位置情報、ARを連動させることで空間を超えた世界も実現しています。
αUは”体験する場所”から”発信する場所”へ
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これまではcluster内に作られたバーチャル空間でしたが、今回発表した「αU」は自社プラットフォームです。生活の中の限定的な時間だけを過ごすのではなく、より生活と一体になる体験を目指すようです。
「KDDI Digital Twin for All」というコンセプトで、リアルとバーチャルの境目がなくなることを目指し、全てのものをデジタルツインで実現するという取り組みを進めています。
リアルとバーチャルの境目がなくなることで、これまでは受動的な体験がメインだったバーチャル空間において、ユーザー自らが発信する体験が進む設計もされています。
中心となるのは「αU metaverse」
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5つの提供サービスの中でも、そのプラットフォーム的な立ち位置で中心となるのが「αU metaverse」です。
バーチャル空間に再現された街で、イベントに参加したり、あらゆるコミュニティに所属し、アバター同士で会話することができます。実際の街のように、レストランやカフェといった飲食店もあります。
コマース体験を提供する「αU place」
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生活するとなると切っても切り離せないのが、買い物です。リアルの店舗や商品をバーチャル上に再現し、ユーザーは店員と会話をしたりしながら、リアル店舗での買い物に近い体験をすることができます。
NFTマーケットプレイスの「αU market」
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NFTアイテムを購入するだけでなく、販売もできるマーケットプレイスです。バーチャル上でのあらゆるアイテムをここで取引することができます。
他のマーケットプレイスとの互換性があるブロックチェーン(Polygon)に対応しています。クリエイターの支援の場としても注目です。
Polygonは、2021年からエンタープライズ向けの営業に注力しています。2021年9月には、世界4大会計事務所のひとつであるEY(アーンスト・アンド・ヤング)もイーサリアムスケーリングにPolygonを採用した実績があります。
PolygonはNFT領域を起点に大企業や有名サービスとコラボした事例を多く作ってきました。このnoteでも取り上げたことがあるアパレルブランドのPRADAやNike、StarbucksなどもNFTを含むプロジェクトでPolygonを採用しています。
またDeFi領域でも、EVM互換ブロックチェーンの利点を生かし、有名サービスをPolygon上に引き入れることに成功しています。
体験型ライブを提供する「αU live」
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特別な演出が楽しめる次世代のライブを提供するのが「αU live」です。リアル世界では座席の指定などの制約がありますが、360度どこからでも視聴することができることはバーチャルならではの新体験です。
これはGoogleとの技術連携で実現するそうで、2023年夏頃に提供を始める予定です。
重要となるのはデジタル上の金融機能「αU wallet」
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リアルの世界では決済などの機能を持つ金融サービスが重要なことは言わずもがなです。デジタルの世界においては、さまざまな取引に使用する暗号資産の管理が必要になってきます。
そこで「αU wallet」は、「αU metaverse」内だけでなく、複数のメタバース間で機能するウォレットという位置づけを目指しています。これはビジネスチャンスとしては大きく、重要だと捉えているようです。
この具体的な方法はまだ検討中のようですが、cluster上のバーチャル空間ではNFT未対応だったため、ウォレットにログインすることができませんでした。今回は独自プラットフォームでNFT対応をしており、大きな進歩です。
まとめ
このように、非常に興味深い5つのサービスがKDDIから発表されました。
一般的にメタバースは一過性のイベントなどでは人が集まるものの、日常的に利用されにくいというハードルがあり、記事で紹介したアバター同士の会話やコマース体験などを通じ、いかに普段使いされるプラットフォームとして定着するかが鍵といえます。
まだ全貌が明らかになっていないものの、今後提供サービスはどんどん追加されるようです。引き続き、「αU」に注目していきたいです。
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同じく携帯キャリアのドコモは、2022年11月にweb3活用に今後5~6年間で6,000億円規模の投資をすると発表していました。
詳細はまだこれからのものも多いと思いますが、「Web3 Enabler」という名の下にウォレット、暗号資産交換所、トークン発行、セキュリティなどの基盤技術の整備を進めています。
その上で、Astar Networkとアクセンチュアと提携し、DAO型アプローチによって多様な業界・業種からの参加を募り、web3エコシステムを築こうとしています。
ドコモとKDDIの取り組み内容はやや異なりますが、1プレイヤーではなく、web3のインフラレイヤーとして大規模な投資をしています。
グローバルでの戦いとなる中で、日本の携帯キャリアがどのようなポジショニングで成功するか、注目です。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
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2022年4月より、「web3事例データベース」を開始しています。web3プロジェクトの調達情報、カオスマップ、事例集を週次更新で提供しています。web3の最新トレンドをいち早くキャッチしたい方は、こちらのnoteより詳細をご確認ください。
過去のweb3事例集
【web3マガジン】事例#1: 暗号通貨レンディング Goldfinch
【web3マガジン】事例#2: 誰でもトップレベルドメイン (TDL) を保有可能にするNamebase
【web3マガジン】事例#3: ステーブルコインを発行・管理するMakerDAO
【web3マガジン】事例#4: 既存の銀行などが暗号資産を管理できるようにするFireblocks
【web3マガジン】事例#5: web3を学んでトークンをもらえるRabbitHole
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