Q. メルカリのビットコイン取引は救世主となるか?

A. メルカリのビットコイン取引は、利用までのハードルの低さから、急成長する可能性は十分にあると考えられる。

決算が読めるようになるノート ビジネスモデル
Q. メルカリのビットコイン取引は救世主となるか?
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A. メルカリのビットコイン取引は、利用までのハードルの低さから、急成長する可能性は十分にあると考えられる。

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

2023年3月から、メルカリのアプリ内でビットコイン取引ができるようになりました。

ビットコインといえば、ビットフライヤーやコインチェックといった暗号資産取引所で取引をしたことがある人もいれば、名前は知っているけれどまだ手を出してはいないという方もいるでしょう。

メルカリとビットコインは一見つながりがないように見えますが、メルカリにとってこのビットコイン取引の機能提供は、大きな可能性を秘めていると言えるかもしれません。

本日はその理由について、競合比較を踏まえて考察しております。この記事は無料で公開しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。

メルカリがビットコイン取引サービスをついに開始

https://about.mercoin.com/news/20230403_bitcoin100k/

2023年4月、メルカリのビットコイン取引サービスの利用者が約2週間で10万人を突破したことが発表されました。

メルカリのビットコイン取引を利用している10万人のユーザーのうち、77%は過去に暗号資産取引を行った経験がないユーザーと発表されています。つまり、他の暗号資産取引所の既存ユーザーの獲得ではなく、新規ユーザーの獲得に成功しているわけです

メルカリのビットコイン取引サービスは、メルカリで何かを販売して得たメルペイ残高やポイントを利用してビットコインを購入したり、逆にビットコインを売ることでメルペイ残高を得ることができる、メルカリアプリ内で完結するビットコイン売買のサービスです。

このビットコイン取引サービスは、メルカリアプリ内で簡単に利用できること、ビットコイン売却後は即座にメルペイ残高に移すことができること等により、メルカリ利用者にとってのハードルが圧倒的に低くサービス提供できていることで、ここまで急速なユーザー獲得ができていると言えるでしょう。

参考:「メルカリ」のビットコイン取引サービス、提供開始初月で利用者数10万人を突破

競合他社との違いは?

暗号資産取引事業を展開する企業は、日本では2012年創業のコインチェックや、2008年創業のビットフライヤーが主な競合企業となります。

メルカリのビットコイン取引サービスは、2023年3月16日からすべてのユーザーの申込みが可能となったので、コインチェックやビットフライヤーと比較して後発での参入となりますが、以下のような競合優位性があります。

(1) メルカリ経済圏のユーザーを取り込めること
→メルカリアプリ内で利用することができ、メルペイ残高を利用してビットコイン売買ができる為、メルカリ経済圏のユーザーが使用しやすい設計となっています。特に、本人確認済みのユーザーであれば、面倒な本人確認プロセスを再度行う必要がなく、約1分程度でビットコイン取引が開始できます。

(2) スプレッドが相対的に小さい(=実質的な手数料が安い)こと
→暗号資産のスプレッドとは「暗号資産の買値と売値の価格差」のことで、この価格差が実質的な手数料となります。メルカリのビットコイン取引サービスのスプレッドは上下1%ずつであることに対し、他競合は上下合わせて5%以上が一般的です。

メルカリのビットコイン取引サービスは、後発ということもあり、思い切ったユーザーメリットの高い良心的なサービスと言えるでしょう。

コインチェックの暗号資産取引収益はどれくらい?

続いて、売上規模の参考のため、コインチェックの親会社であるマネックスグループの決算を見てみましょう。

https://www.monexgroup.jp/jp/investor/ir_library/presentation/main/018/teaserItems1/06/linkList/02/link/JP_FinancialResult_20230130_J_Final.pdf

2023年3月期3Q(2022年10-12月)時点で、コインチェックの暗号資産取引の売買代金は276億円、営業収益は10.6億円となっています。

https://www.monexgroup.jp/jp/investor/ir_library/presentation/main/0110/teaserItems1/08/linkList/014/link/JP_FinancialResult_20220427_J.pdf

また、コインチェックが全盛期だった2021年1-3月と比較すると、営業収益は142.3億円→10.6億円(約▲92.5%減)、売買代金は2,935億円→276億円(約▲90.6%減)と大きく縮小していることが分かります。

逆に言うと、暗号資産の取り引きが盛り上がるタイミングにおいては、今の10倍ほどの規模の取引量や収益が見込める可能性がある市場であるとも言えます。

コインチェックの1口座あたりの売買代金は?

https://www.monexgroup.jp/jp/investor/ir_library/presentation/main/018/teaserItems1/06/linkList/02/link/JP_FinancialResult_20230130_J_Final.pdf

コインチェックの口座数は178万口座で、前四半期から+3万口座となっています。また、全盛期だった2021年1-3月時点の口座数は120万口座でした。

これらの数字から、それぞれの「1口座あたりの売買代金」は以下のように算出されます。

●現在(2022年10-12月):
1口座あたりの売買代金 = 276億円/四半期 ÷ 178万口座 = 15,508円/四半期

●全盛期(2021年1-3月):
1口座あたりの売買代金 = 2,935億円/四半期 ÷ 120万口座 = 24,458円/四半期

メルコインの売上インパクトは?

前述のコインチェックの各種情報をもとに、メルカリのビットコイン取引の売上インパクトを試算してみましょう。

●メルカリのビットコイン取引の四半期売上試算
四半期売上 = 口座数 × 1口座あたりの売買代金 × スプレッド(手数料)
    = 10万 × 15,505円 × 1%
    = 1,550万円

※1口座あたりの売買代金は、コインチェックと同じ水準と仮定して、コインチェックの2022年10-12月の1口座あたりの売買代金の値を設定

もちろん、ユーザーの質やアクティブ率、取扱銘柄などに違いがある為、あくまでも参考としての水準です。

https://pdf.irpocket.com/C4385/NJLt/OTOe/bekX.pdf

2022年10-12月時点のメルカリの四半期連結売上は442億円、営業利益は27億円であることから、上記のメルカリのビットコイン取引による売上試算の規模では、全体に与える売上インパクトは非常に小さいことが分かるでしょう。

メルペイ利用ユーザーの増加の可能性

一方で、そんなメルカリのビットコイン取引には、大きな可能性が秘められているという見方もできます。

https://pdf.irpocket.com/C4385/NJLt/OTOe/bekX.pdf

2022年10-12月時点のメルペイの本人確認済み利用者数は1,276万人です。メルペイの本人確認済みユーザーが約1分ですぐにビットコイン取引を開始できるという圧倒的な強みを考慮すると、現在の10万人という利用者数が何かをきっかけに大きく増加することが想像できるでしょう。

また、今後ビットコインの価格が上昇し、数年の周期でやってくる暗号資産の盛り上がりのタイミングに合わせて、一気にユーザー数が拡大することも十分に考えられます。

仮に、この1,276万人の利用者のうち15%がビットコイン取引を利用すると仮定すると、利用者数は約190万人に達します。これは、コインチェックの口座数178万を上回り、日本最大のユーザー数を抱える暗号資産取引所が誕生することを意味します。

以上より、メルカリのビットコイン取引には、大きな可能性が秘められているとも言えるでしょう。

米国Block社のCash Appの成功を辿れるか

メルカリのような、別事業から暗号資産取引事業に進出した他社事例として、米国のBlock社が挙げられます。Block社のCash Appは送金アプリとして広まった後に、暗号資産取引機能を追加したことで、大きく売上を伸ばすことに成功しました。

Block社のセグメント別の四半期売上推移を見ると、全盛期である2021年1-3月は$3,551M(約3,511億円)の売上を記録しています。

メルカリのビットコイン取引のエントリーハードルの低さから、ビットコインを中心とした次の暗号資産の盛り上がりの際には、このような急成長を描く可能性は十分にあると考えられます。

まとめ

ここまで、メルカリのビットコイン取引について、競合比較やその可能性について見てきました。

・メルカリのビットコイン取引の利用者は約2週間で10万人を突破した。

・他の暗号資産取引事業を展開する競合と比較した優位性は、以下の2つと考えられる。
(1) メルカリ経済圏のユーザーを取り込めること
(2) スプレッドが相対的に小さい(=実質的な手数料が安い)

・現在の水準では、メルカリの全社売上に影響を及ぼすという規模感ではないと想定されるものの、メルペイの本人確認済み利用者の送客が期待できるため、非常に大きな可能性を秘めていると想定される。

短期間で急成長しているメルカリのビットコイン取引の利用者数が、今後どれほど伸びるのか、次の暗号資産バブルの際にはどれだけの売上インパクトを記録するのか、引き続き注目していきたいと思います。

《決算が読めるようになるノート》

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