「ANAは国際線、貨物に強み」「JALは収益性重視」 国際線・国内線・貨物・LCCなど事業別に比較検証

ANAとJALは国際線需要回復で増収も、コスト増の影響は大きい。ANAは売上規模が大きくLCCにも注力、一方JALはコスト管理を重視し利益率を維持している。

決算が読めるようになるノート 決算解説
「ANAは国際線、貨物に強み」「JALは収益性重視」 国際線・国内線・貨物・LCCなど事業別に比較検証
  • 「ANAは国際線、貨物に強み」「JALは収益性重視」 国際線・国内線・貨物・LCCなど事業別に比較検証
  • ANAホールディングスより
  • 日本航空より
  • ANAホールディングス2025年3月期 第3四半期決算資料より
  • 日本航空2025年3月期 第3四半期 決算資料より
  • ANAホールディングス2025年3月期 第3四半期決算資料より
  • ANAホールディングス2025年3月期 第3四半期決算資料より
  • 日本航空2025年3月期 第3四半期 決算資料より

航空業界はコロナの影響から回復し、新たな成長段階に入っています。今回は、日本の航空業界を代表するANAホールディングスと日本航空の2社の決算データをもとに、国際線・国内線・貨物・郵便・LCC(ローコストキャリア)事業など主要セグメントを比較していきます。


2025年3月期 第3四半期(2024年4月~12月)の業績を比較すると、ANAとJALの売上収益はともに前年同期を上回る成長を見せました。ANAの売上高は1兆7,027億円(前年同期比+10.3%)、JALの売上高は1兆3,859億円(前年同期比+10.9%)となり、いずれも2桁成長を達成しました。これは、国際線の需要回復や、国内線の堅調な利用状況によるものです。

しかし、燃油費の上昇や整備費増加の影響は年々大きくなってきており、業界全体が抱える課題となっています。利益率の面では、ANAは売上高の規模ではJALを大きく上回っていますが、コストの増加により利益の伸び悩みが見られます。JALは、ANAほど売上規模は大きくないものの、営業利益率の低下を最小限に抑えています。

このように、売上収益の成長という点では両社とも順調ですが、コストの上昇が利益に与える影響には違いが見られます。次は、具体的な収益構造の内訳を分析し、どの事業セグメントが業績を支えているのかを詳しく見ていきます。

収益構造の詳細分析

航空会社の収益は、大きく分けて国際線、国内線、貨物・郵便、LCC(ローコストキャリア)事業の4つのセグメントから成り立っています。ANAとJALは、それぞれの強みを活かしてこれらの事業を展開していますが、収益構造には違いがあります。ここでは、それぞれのセグメントの収益動向を比較します。

国際線収益の比較

国際線は、ANA・JALともに重要な収益源となっています。2025年3月期 第3四半期の国際線の売上収益は、ANAが8,000億円(前年同期比+9.0%)、JALが5,186億円(同+9.9%)となり、両社とも国際線の需要回復により増収となりました。ANAは、特に欧米路線の需要が好調であり、座席利用率の上昇が売上の増加を支えました。一方のJALは、アジア路線の回復が顕著であり、中国や東南アジアからの訪日需要の増加がプラスに働きました。

また、ANAとJALでは国際線のビジネスモデルにも違いがあります。ANAは、ファーストクラスやビジネスクラスの販売にも注力し、高単価の需要を取り込んでいます。一方のJALは、プレミアムエコノミーの拡充を進め、幅広い顧客層に対応する戦略を取っています。


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