伊藤園は緑茶飲料「お~いお茶」や「健康ミネラルむぎ茶」で知られる飲料大手で、国内シェア上位を誇り、海外でも展開を拡大しています。
伊藤園 2026年4月期 第1四半期実績

第1四半期(2025年5月~7月)における伊藤園の業績は、売上高130,875百万円で前年同期比+4.7%、営業利益は8,360百万円で+17.3%、経常利益8,924百万円で+23.6%、純利益は5,712百万円で+28.6%の伸長を示しました。
特に注目すべきは、販管費の水準が前年とほぼ変わらない中で売上総利益が増加し、利益率改善が進んでいる点です。販管費の内訳では広告宣伝費が20%以上減少しており、効率的なマーケティング支出が利益押し上げに寄与しました。
一方、運送費や減価償却費はやや増加しており、物流や資産維持のコスト上昇が背景にあります。物価高や燃料費の上昇は業界全体に及んでおり、同社も例外ではありませんが、それ以上に利益率改善を実現した点は評価されるべきポイントです。
カテゴリー別売上分析

茶系飲料の動向と「お~いお茶」戦略
伊藤園の強みはやはり茶系飲料で、第1四半期の販売数量は合計4,450万ケースと前年同期比+3%の増加でした。
緑茶は2,588万ケースで+1%と横ばいながらも安定した需要を維持し、むぎ茶は1,426万ケースで+6%と大きく伸びました。猛暑が後押ししたことに加え、パッケージ戦略やコラボレーションが成功し、特に「健康ミネラルむぎ茶」は消費者の支持を拡大しました。
「お~いお茶」では、大谷翔平選手を起用した広告展開や限定デザインボトル発売が話題性を高め、若年層や海外市場への浸透を狙っています。日本市場では既に高いシェアを持つ緑茶カテゴリーで、単純な数量拡大が難しい中、付加価値提案やグローバル施策を通じてブランドを成長させる姿勢が読み取れます。
「健康ミネラルむぎ茶」の拡大と市場シェア

「健康ミネラルむぎ茶」は、2025年7月に過去最高の販売数量を記録し、累計売上本数も1億本を突破しました。
これは単なる季節要因だけでなく、MLB30球団スペシャルエディションの投入や、子供のスポーツ支援といった社会性を打ち出す施策が消費者心理に響いた結果です。飲料市場での麦茶の地位をさらに固め、RTD麦茶ブランドとして世界的にもトップシェアを持つ地位を築きつつあります。
一方で、麦茶は夏季需要への依存度が高いカテゴリーでもあり、季節変動リスクをどう平準化するかが課題です。伊藤園は近年、通年需要を喚起するために機能性や健康訴求を組み合わせ、麦茶を「夏の飲み物」から「日常の健康飲料」へと位置付けを広げています。この方向性は長期的な成長の鍵となるでしょう。
その他カテゴリーの課題と成長余地

コーヒー飲料は514万ケースで+9%と順調に伸びましたが、炭酸飲料は117万ケースで▲29%、野菜飲料も575万ケースで▲8%と大幅な減少を記録しました。
炭酸飲料の低迷は市場全体でも見られる傾向で、糖分や炭酸に対する健康志向の強まりが背景です。野菜飲料については、価格競争や他社の強力ブランドに押されている構図が見えます。
この点で、伊藤園が得意とする「健康」と「自然派」のブランドイメージをどう他カテゴリーに拡張するかが問われます。野菜飲料においても原材料や機能性を強調する新提案が求められるでしょう。