オリックスと三菱HCキャピタルは、いずれも日本を代表する総合リース会社です。両社は伝統的なリース業にとどまらず、不動産や事業投資、エネルギーなど多岐にわたる領域で事業を展開しており、その収益構造も多様化しています。本記事では、2024年3月期の最新決算資料をもとに、両社の業績および戦略を比較しながら、収益構造や今後の方向性を探っていきます。


リース会社の事業内容
リース会社とは、企業や個人に対して機械設備、車両、IT機器、不動産などの資産を貸し出し、その使用料(リース料)を収益として得る事業者のことを指します。利用者は初期投資を抑えて必要な設備を調達できる一方、リース会社は物件の保有や資金調達のノウハウを活かして安定的なキャッシュフローを生み出します。
しかし、近年の大手リース会社はこうした「物件貸付業務」だけにとどまらず、ファイナンス、M&A、不動産投資、再生可能エネルギー、航空・船舶ファイナンス、さらには海外での資産運用や事業投資など、事業領域を広げています。特に総合リース会社と呼ばれる企業は、貸付型ビジネスから投資型ビジネスへの移行を進めており、利ざやを稼ぐ金融業というよりも、収益性の高い資産を自ら保有・運用する「投資会社」としての色合いを強めています。
そのため、リース会社の実態を把握するには、単なる売上高ではなく、どの事業セグメントがどれだけ利益を稼いでいるのか、どの資産が成長の源泉となっているのかを見極める必要があります。本稿では、こうした視点からオリックスと三菱HCキャピタルの決算を読み解いていきます。
2社の2025年3月期 第3四半期業績比較

オリックスの2025年3月期第3四半期の連結決算において、当期純利益は2,718億円(前年同期比+24%)とQ3累計として過去最高益と好調でした。税前利益は3,834億円(前年同期比+24%)と、収益面では大幅な増益を達成しました。ROE(自己資本利益率)は9.0%と前年同期の7.3%から改善しており、高い資本効率を維持しています。

同社の利益構成を見ると、最大の利益貢献セグメントは「法人営業・メンテナンスリース」の662億円で、事業承継投資先の売却や中古車売却益が貢献しました。
「事業投資・コンセッション等」セグメントも、662億円の利益を計上しています。PE投資先の取込利益拡大、売却益増加に加え、旅客需要も好調です。
これらに続くのが「保険」と「不動産」セグメントで、オリックスはリースにとどまらず、不動産・事業投資・保険・海外金融など、多様な収益源を持つ複合金融グループとしての強みを発揮しています。景気変動にも強い分散型ポートフォリオは、同社の安定的な成長を支えています。

三菱HCキャピタルの2025年3月期第3四半期の連結決算では、売上総利益が3,465億円(前年同期比+28.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は870億円(同+8.0%)と、着実な増益を記録しています。ROEは7.2%と前年同期比+0.4ポイントの改善でした。
「海外地域・環境エネルギー」セグメントにおいて貸倒関連費用が増加したものの、「航空・ロジスティクス」セグメントが好調に推移していることにより前年同期比で64億円の増益を達成しました。
今後も、「航空・ロジスティクス」セグメントにおいて期初計画を上回る業績を
見込んでいることに加え、「環境エネルギーセグメント」におけるアセット売却に係る大口利益の計上等を見込んでいます。
全体として、三菱HCキャピタルは2021年の統合後に構築した多角化された事業ポートフォリオが機能しており、特定分野に依存しない安定的な利益体質を確立しています。今後もモビリティと海外、環境関連を成長領域と位置づけ、資産入れ替えやM&Aも含めた機動的な戦略を志向しています。
両社の注力分野と将来戦略
オリックスと三菱HCキャピタルはともに「総合リース会社」という枠を超え、多角的な事業を展開していますが、その戦略の方向性や注力分野には明確な違いが見られます。
