キリンとアサヒは日本のビール市場を代表する企業であり、国内外で事業を展開しています。両社は国内市場の成熟化や消費者嗜好の変化に対応しながら、売上と利益の最大化を目指していますが、その戦略には大きな違いが見られます。本記事では、両社の決算内容を比較、主要ブランドを分析しながら、戦略の違いを明らかにします。


両社の決算比較

キリンホールディングスの2024年度の売上収益は、前年比9.6%増の2兆3,384億円となりました。主力のビールセグメントが堅調に推移し、特に「キリン一番搾り」の販売が回復したことが寄与しています。
事業利益は2,110億円となり、前年の2,015億円から増加しました。これは、ヘルスサイエンス事業の成長やコスト効率の改善によるもので、原材料費や物流費の上昇にもかかわらず、安定した利益成長を確保しています。事業の多角化と構造改革が実を結びつつあり、今後のさらなる収益強化が期待されます。

アサヒグループホールディングスの2024年12月期の売上収益は、前年同期比0.9%増の2兆3,441億円となりました。主に国内での安定した販売に加え、欧州を中心としたプレミアムビールの需要拡大が全体収益を下支えしています。国内では、「アサヒスーパードライ」や「生ジョッキ缶」などの主力ブランドが堅調に推移しました。
事業利益は2,870億円で、前年の2,851億円から微増となりました。原材料費や物流費の上昇が続く中、コスト管理と価格改定により利益率を維持しています。
両社の事業構成を比較すると、キリンは国内酒類を中心にしつつ、ヘルスサイエンス事業の比率を高めています。2024年12月期は同事業の売上・利益ともに2桁成長を記録し、医薬・機能性食品領域が全体の収益を下支えしました。
一方、アサヒは依然として国内事業の比率が高いものの、欧州やオセアニアを中心とした海外展開が順調に拡大しており、売上の約4割を海外が占めています。海外事業の売上増は続いているものの、利益面の伸びは限定的で、2024年の事業利益は前年比0.7%増にとどまりました。
キリンは非酒類分野への多角化を進め、アサヒはグローバル市場の成長に注力するなど、成長戦略に明確な違いが見られます。