民間企業が月へ挑む ispaceの決算と月面ビジネスの全容

民間企業のispaceは月面ミッションを進め、成長と技術革新を図りつつ赤字と投資を継続、市場拡大へ挑戦しています。

決算が読めるようになるノート 決算解説
民間企業が月へ挑む ispaceの決算と月面ビジネスの全容
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これまで宇宙開発は国家主導が当たり前とされてきましたが、いま民間企業がその常識を覆そうとしています。月面を目指すispaceは、着実にミッションを重ね、将来の月面経済圏の構築を見据えて事業を拡大しています。民間主導の宇宙探査は、もはや夢物語ではなく現実的な成長産業として動き出しており、政府の支援や国際協力の枠組みも年々広がりを見せています。ispaceはこうした市場の追い風を受けながら、自社の技術力と営業力を武器に存在感を強めています。

ispaceより

ispaceの決算状況と財務基盤

ispace 2025年3月期 通期 決算説明資料

2025年3月期におけるispaceの売上高は47億4,300万円となり、前期の23億5,700万円から約2倍の水準へと大きく伸びました。売上成長の主な要因は、ミッション2とミッション3に関するペイロード売上が順調に積み上がったことにあります。特にミッション2では、会計上の売上計上基準が変更されたことにより、売上の前倒し計上が進んだことも増収の一因となりました。

売上が拡大した一方で、営業損失は97億9,500万円と依然として大きな赤字を計上しています。前年の営業損失は55億100万円であり、研究開発投資や人件費の増加が赤字幅の拡大につながりました。販売管理費は120億3,900万円で、特に研究開発費が77億3,000万円と前期比で倍増し、成長投資を積極的に行っていることが読み取れます。

財務面では、2024年7月に実施したシンジケートローンにより、短期借入金を長期借入金へ転換し、長期借入金は160億9,600万円に達しました。2024年10月には普通株式による増資を行い、70億円を調達することで財務基盤の強化も進めています。現預金は131億1,700万円と安定した水準を維持しており、今後の複数ミッションを同時並行で進める資金力を確保しています。

営業キャッシュフローはマイナス120億4,900万円と大きく、投資キャッシュフローもマイナス26億7,100万円となりましたが、財務キャッシュフローで104億2,300万円を調達し、安定的な現金残高を支えています。ispaceは積極的な資金調達と成長投資をバランスよく進めながら、赤字の先行を許容し、将来の収益基盤を築いている段階にあります。

ispaceのビジネスモデルと主要サービス

ispace 事業計画及び成長可能性に関する事項より
ispace 2025年3月期 通期 決算説明資料

ispaceの主力ビジネスはペイロードサービスです。これは顧客の実験機器や荷物を月面まで運ぶサービスであり、現在の売上の中心を占めています。ペイロードサービスの収益モデルは、月面着陸ミッションごとに顧客から輸送費を受け取る形となっており、ミッション3では契約総額約6,500万ドルを確保しています。

ispace 事業計画及び成長可能性に関する事項より

パートナーシップサービスもispaceの初期から続く重要な事業であり、顧客企業のロゴをランダーやローバーに掲載することで、企業の広報・ブランディングを支援しています。このサービスは安定した収益源としてispaceの財務を支えています。

今後の成長の柱と見込まれるのがデータサービスです。ispaceは自社のランダーやローバーを用いて取得した月面データを蓄積し、そのデータを販売する仕組みを構築しようとしています。高頻度でミッションを実施することで得られるデータベースの構築を目指しており、将来的には月面に関する貴重な情報を商用利用できる体制を整えています。現時点ではデータサービスの売上は計上されていませんが、長期的にispaceの収益多様化を支える分野として期待されています。

ispaceが掲げる「Moon Valley 2040」の構想は、2040年代に1,000人が月面に居住し、年間1万人が月に訪れる世界を実現することを目標にしています。このビジョンの実現には、建設、エネルギー、通信、資源開発といった多様な業界との連携が不可欠であり、ispaceはそのハブとなる企業を目指しています。

具体化する月面ミッションと技術開発

ispaceのミッションは、すでに複数段階で進行しています。2022年に打ち上げたミッション1は、最終的な月面着陸には至りませんでしたが、多くの技術実証に成功し、次の挑戦につながる重要な知見を得ることができました。


《決算が読めるようになるノート》