日本の不動産業界を代表する三井不動産と三菱地所は、ともに東京を中心とした都市再開発やオフィス賃貸、商業施設運営などを担い、日本経済に大きな影響を与える存在です。本稿では両社の最新決算をもとに、その収益構造と事業戦略の違いを読み解きます。
2026年3月期第1四半期 決算内容の比較

2026年3月期第1四半期における三井不動産の連結業績は、営業収益8,023億円、営業利益1,601億円、経常利益1,440億円、純利益1,242億円と、前年同期から大幅な増収増益を達成しました。
特に分譲事業におけるマンション販売の進展が利益拡大に寄与し、第1四半期として過去最高水準の収益を計上しています。

一方、三菱地所の2025年度第1四半期連結業績は、営業収益3,569億円、営業利益624億円、純利益319億円となりました。
前年同期比で営業利益は増加しており、既存オフィスの賃料改定や住宅分譲の引き渡し、さらにホテルや商業施設の回復が収益を押し上げています。ただし、売上規模では三井不動産の半分程度にとどまる点は両社の事業ポートフォリオの違いを反映しています。
オフィス稼働率と商業施設運営
オフィスビル事業は両社の基盤を支える重要な収益源です。

三井不動産は首都圏オフィスの空室率を1.1%(2025年6月末時点)と低水準に維持しており、安定的な稼働を背景に賃料収益が堅調に推移しました。 また、商業施設においても首都圏の空室率は1.1%にとどまり、関西圏や地方でも2~3%台と低位に推移し、施設稼働の高さが収益を下支えしています。


三菱地所は丸の内エリアを中心にオフィス事業を展開しており、当該地区の空室率は1.73%と依然として低水準です。 既存ビルの賃料改定が進んだほか、ホテルや商業施設の需要回復が加わり、非オフィス分野の収益力も高まりつつあります。訪日需要の復調によってホテル稼働率が改善し、セグメント収益を押し上げた点が三菱地所の特徴といえます。
両社を比較すると、三井不動産は広域にわたるオフィス・商業施設群を安定的に稼働させることで分散型の収益基盤を築いているのに対し、三菱地所は丸の内というブランド力の強い一等地で稼働率を高水準に保ち、エリア集中戦略による優位性を確立しています。
住宅・分譲事業の違い

住宅事業に目を向けると、三井不動産はマンション分譲の契約進捗が第1四半期の段階で約9割に達するなど高水準であり、分譲事業が利益成長の主力となりました。特に都心の高額物件や投資用不動産が順調に販売され、通期計画に対する進捗率が高まっています。

三菱地所の住宅分譲事業も前年同期比で大幅に拡大しており、第1四半期の住宅関連売上高は前年の数十億円規模から200億円近くへと急増しました。 大規模物件の引き渡しが寄与した結果であり、利益面でもプラスに転じています。
ただし三井不動産に比べると事業規模は限定的で、収益全体に占める割合は小さい点が特徴です。
都市再開発戦略の比較
都市再開発は両社の中長期成長を支える基盤であり、競争力を象徴する分野でもあります。