ヒント:住宅価格が下落する中で、主力事業を撤退したZillowがとる成長戦略は以下の2つが考えられる。
(1) ●●への進化
(2) ●●セグメントの強化
コロナで上がり続けた住宅需要から一転して、住宅ローンの金利上昇をきっかけに、住宅価格の下落が世界的に起きています。
この住宅価格の下落によって、不動産業界の多くの企業は少なからず影響を受けています。
そんな市場環境の中、本日は米国の不動産テック大手のZillow(ジロー)に注目して、今後の成長戦略を考察しました。
米国の大手不動産メディアを運営するZillowは、コロナの影響で、これまで積極投資していた「Zillow Offers」という、自社で安く購入した不動産をリノベして販売する主力事業を撤退しています。
主力事業を撤退して立て直しが急務の中、Zillowはどのように成長する戦略なのか、読者の皆様も考えながら読み進めていただけると幸いです。
この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。
不動産テック大手のZillowとは?
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Zillowは2006年に米国で設立された不動産テックの大手企業で、米国の1.3億件以上の物件情報を保有し、その物件の現在の推定価格やこれまでの価格の推移などを掲載する不動産情報のWebサイト「Zillow」を運営しています。
特に、Zillowは他の競合と比較して圧倒的な情報量が武器であり、以下のBUSSINESS INSIDERの記事によると、米国の不動産情報に関するWeb検索の約3割をZillowが占め、FY22Q4の決算によると、Q4時点のユーザー数は1.98億人とかなりの規模です。
参考:米不動産テック大手Zillowの大失敗に見るAI経営の教訓…「予測モデルの過信」「目標設定のミス」は他人事ではありません
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FY2021Q4のZillowの決算報告を見ると、Zillowの競合であるRealtor.comやRedfinと比較して、DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は約3倍強と圧倒的な差があります。これは、競合と比較して売出し中の物件以外もカバーしているという情報量の差が理由でしょう。
Zillowは主に以下の3つの事業セグメントを展開しています。
(1) Homesセグメント
→AIを活用して、自社で安く購入した不動産を、リノベーションして販売するZillow Offersという事業が中心で、国内では「GA Technologies」や「すむたす」が同様の事業内容を展開しています。
(2) IMT(Internet, Media, and Technology)セグメント
→不動産関連のオンライン広告、及びリード管理ソフトウェアの提供による営業支援サービスや広告事業です。具体的には、不動産の売り手は、不動産代理店やブローカーを介して売り出す物件をZillowに掲載しますが、その売り手に対して売買がスムーズに行くよう、Zillow上に広告を掲載したり、見込み顧客の管理ができるサービスを提供するというものです(類似した事業展開の事例として、AmazonのAmazon広告があります)。
(3) Mortgagesセグメント
→Zillow Mortgages は、不動産購入者に対して、住宅ローンの比較および申請をサポートする事業です。これにより、買い手は住宅ローンに関する情報を収集し、最適な住宅ローンを選択することができ、買い手の購入促進に繋がります(似たような事例だと、Appleの後払いサービスが挙げられます。詳しくは以下をご覧ください)。
Appleの後払いがついにリリース、子会社を作り本腰を入れてきた理由とは?
Zillowの決算内容
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Zillowの四半期売上を見ると、Homesセグメント(上図青)が大きく成長した一方でFY22Q2以降大きく下落しています。また、IMTセグメント(上図赤)及びMortgagesセグメント(上図黄)の売上は相対的にかなり小規模です。
このHomesセグメントの売上の変動の理由は、「Zillow Offers(iBuyer事業)」にあります。Zillow Offersとは、「Zestimate」という不動産価格を査定するアルゴリズムを用いて、Zillowが不動産を安く購入した上で、短期間でリノベーションを行い、より高値で販売するという事業です。
参考:iBuyer(アイバイヤー)とは、AIの価格査定アルゴリズムを使用して不動産を査定し、売り手から直接物件を買い取り、その後転売していくビジネスモデルです。
このZestimateがかなり高い精度で不動産価格を査定できていた為、Zillow Offersを含むHomesセグメントの売上は順調に推移したものの、コロナによって都市部から郊外に注目が集まる等の不動産市場の変化が起きたことでZestimateの精度が大きく狂い、ZillowはZillow Offersの撤退を発表しました。
撤退に伴い、Zillowは保有していた不動産の64%を購入価格以下で赤字売却するという決断に至りました。これらによって、Homesセグメントは上図のように大きく落ち込んでいます。
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次に、Zillowの営業利益を見ると、FY21Q3(2021年7-9月)およびFY21Q4(2021年10-12月)で大幅な赤字を計上しています。
これは、Zillow Offersへの積極投資としてより多くの不動産を確保したものの、コロナによってZestimateの精度が狂い、保有していた物件の在庫処理として減損を計上したことなどが要因です。
ここまで、Zillowの事業内容や決算内容、Zillow Offersの撤退要因について見てきました。次章からは、コロナを機に不動産市場が変化したことに伴う競合への影響や、Zillowの今後の成長戦略について解説します。
この記事は、不動産テックに関心のある方や不動産事業に従事している方、企業の成長戦略に関心がある方に最適な内容になっています。
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・Q. 住宅価格が下落する中で米不動産テック大手Zillowがとる成長戦略とは?の答え
・不動産市場の変化による競合企業への影響
・●●の強化は成長戦略として適切か?
・Zillowの強みを活かして、不動産No1カンパニーへ
・まとめ