Q. AI/DX学習支援のアイデミーが上場、法人事業急成長の理由とは?

A. アイデミーの法人事業が急成長している理由は、法人向けの「AI/DXプロダクト」と「AI/DXソリューション」の二つの事業が相互にシナジーを発揮し、顧客のAI/DX実現の上流にあたる人材育成領域から

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A. アイデミーの法人事業が急成長している理由は、法人向けの「AI/DXプロダクト」と「AI/DXソリューション」の二つの事業が相互にシナジーを発揮し、顧客のAI/DX実現の上流にあたる人材育成領域から、アイデミーのコンサルタントが伴走するDXプロジェクト支援まで一気通貫したサービスを提供できているため。

本日は、2023年5月に東証グロース市場に上場承認された「株式会社アイデミー」について、新規上場のための有価証券報告書から、法人向け事業が急成長している理由を分かりやすく解説します。

ご存知の読者の方もいるかと思いますが、アイデミーは個人・法人の双方に対して、AIやDXなどのデジタル人材の育成支援を行うオンライン学習サービス等を運営する企業です。

この記事は、DX支援事業に従事している方には特におすすめの内容となっています。無料で公開しているので、ぜひ最後までご覧ください。


アイデミーが上場

https://aidemy.co.jp/

アイデミーは、2014年に設立されたAIやDX学習支援サービスを展開する企業で、2023年5月19日に上場承認、同年6月22日に上場予定で、時価総額は28.2億円(直近期末の決算に対して、PSR2.44倍、PBR4.38倍)と想定されています。

創業当初、個人向けの無料AI学習サービス「Aidemy(現、Aidemy free)」をリリースし、続いてDXのトレンドを掴み、AIをはじめとしたDX学習支援、DXプロジェクトの支援サービスの提供と、時代の潮流に合わせて事業領域を拡大しています。


アイデミーの3つの事業

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/cg27su0000007k0x-att/06Aidemy-1s.pdf

アイデミーは以下の3つの事業セグメントを展開しています。

●法人向け
(1) AI/DXプロダクト: デジタル人材育成支援「Aidemy Business」、「 Aidemy Practice」
→主に大企業向けにAIやIoT、DX、ブロックチェーン技術などデジタル技術の内製化に必要な人材育成支援を行うオンライン学習サービスのAidemy Businessと、講師を派遣してデジタル人材育成研修を実施する講師派遣型研修サービスのAidemy Practiceを提供。

(2) AI/DXソリューション: デジタル変革伴走型支援「Modeloy」
→主に大企業向けにDXにおけるテーマ選定、実証実験、システム開発、運用までのすべての領域をアイデミーのコンサルタントが伴走。顧客社員とプロジェクトを立ち上げることで、顧客内にノウハウを蓄積することが可能。

●個人向け
(3) AI/DXリスキリング: 個人向けAI/DXリスキリング支援「Aidemy Premium」
→Aidemy Premiumは、個人向けのデジタル人材育成支援プログラムで、3-6ヶ月間でデジタルスキルの習得を目指す完全オンラインの学習支援サービスを提供。


最も伸びている事業はどれ?

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/cg27su0000007k0x-att/06Aidemy-1s.pdf

2022年5月期のセグメント別売上を見ると、AI/DXプロダクト(8.55億円)→AI/DXリスキリング(2.40億円)→AI/DXソリューション(6,063万円)の順で大きく、特にAI/DXプロダクトがYoY+126.6%と、前年比で2倍以上の成長率を記録しています。

次に、2023年5月期第3四半期累計を見ると、AI/DXプロダクトが8.89億円、AI/DXソリューションが1.32億円です。それぞれ3Q時点で、2022年5月期の1年間の売上を超過しており、特にAI/DXソリューションは2倍以上と大きく成長しています。

AI/DXソリューションは、前述の通りソフトウェアの提供ではなく、コンサルタントが稼働することで売上が発生するビジネスモデルのため、今後この売上成長を維持するためにはコンサルタントの採用が不可欠です。

今回想定時価総額が30億円以下と、そこまで大きくない中で上場に踏み切った背景の1つには、コンサルタント採用のためのブランディング目的もあると推察できます。


法人事業の売上比率は何%?

次に、法人向け事業(AI/DXプロダクト + AI/DXソリューション)と、個人向け事業(AI/DXリスキリング)の四半期売上推移を見ると、法人向け事業が右肩上がりに成長を続けており、全社売上の成長ドライバーとなってます。

アイデミーは個人向けの学習支援サービスから始まりましたが、2023年5月期3Q時点では、全社売上の約85%を法人向け事業が占めており、うまく事業をピボットしていることが分かります。


事業の要となる法人事業間のシナジー

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/cg27su0000007k0x-att/06Aidemy-1s.pdf

法人向け事業であるAI/DXプロダクトとAI/DXソリューションは、以下のようにシナジーを発揮し、好循環を生み出すビジネスモデルになっています。

(1) 顧客の導入ハードルが低いAidemy Business(オンライン学習サービス)を中心としたAI/DXプロダクトを導入

(2) 顧客のニーズを人材育成時に把握し、内製化の実践としてDX開発を提案、AI/DXソリューション(コンサルタントが伴走)で顧客のDX内製化を支援

(3) AI/DXソリューションを通して、顧客との強い繋がりを構築し、業界課題の把握やノウハウを蓄積し、ノウハウを元に、AI/DXプロダクトの新規プロダクトの開発や既存コンテンツを拡充

(4) (1)に戻る


競合となるDX支援を行うSIerやコンサル企業に対する優位性

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/cg27su0000007k0x-att/06Aidemy-1s.pdf

コロナ禍で加速したDXニーズに伴い、アイデミーのようなDX支援を行う企業はかなり増えました。その中でもアイデミーの優位性は「AI/DX実現の最上流フェーズを押さえていること」です。

具体的には、アイデミーは他のDX支援企業と異なり、AI/DX実現の最上流フェーズである人材育成領域において、記事執筆時点で150以上の豊富な学習コンテンツを揃えています。AI/DX人材の育成は大企業を中心に高いニーズがありますが、後発の企業がアイデミーを超える多様なコンテンツをこれから開発することは大きな参入障壁になります。

前述したシナジーの第3ステップである、AI/DXプロダクトで育成した大企業の顧客社員と共に、プロジェクトを立ち上げ、AI/DXソリューションで顧客のDX内製化までを一気通貫で提供できることが、アイデミーの競合優位性の1つです。


個人向けから法人向け主体に移行しているサービス

アイデミーと同じく学習支援サービスを提供している米国発サービスの「Udemy」も、当初は個人向けの学習支援サービスを提供していましたが、徐々に法人向け事業が伸びており、2022年7-9月には法人向け事業の売上が個人向け事業を超えています。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08881/e65d8476/0397/4350/992f/54f0b4b1719f/140120230510564593.pdf

日本国内で英語学習サービスを提供する「レアジョブ」は、2023年3月期4Q時点では個人向け事業の売上のほうが大きいものの、個人向け事業の成長は停滞している一方で、法人向け事業はYoY+19.3%と2桁成長になっています。

このように、個人向けの事業からスタートし、その後は法人向け事業で成長するという戦略は、顧客の予算規模の観点からも、売上拡大に効果的な戦略の1つです。

その上で、アイデミーが特徴的なのは、単純に法人向け事業を拡張しただけではなく、AI/DXコンテンツを提供しながら、コンサルタントによるDXプロジェクト支援まで事業領域を拡張したことで、これがアイデミーの高い成長率に繋がっています。


まとめ

ここまで、AI/DX学習支援サービスを提供するアイデミーについて見てきました。

・アイデミーは、(1)AI/DXプロダクト、(2)AI/DXソリューション、(3)AI/DXリスキリングの3つの事業セグメントを展開しており、法人向け事業である(1)及び(2)が大きく成長し、全社売上の約85%を占めている。

・一般的なDX支援企業と異なり、アイデミーはAI/DX実現の最上流工程である「人材育成」領域で豊富なコンテンツを有しているため、後発の参入障壁になっている。

・AI/DXプロダクト事業で育成した顧客社員と共に、アイデミーのコンサルタントとプロジェクトを立ち上げ、DX内製化を一気通貫で支援しているAI/DXソリューション事業のシナジーが大きいことが優位性となっている。

・個人向け事業から法人向け事業にピボットする戦略は、売上拡大期によく見られるが、アイデミーは更に顧客のDXプロジェクト支援まで事業領域を拡張したことで、高い成長率を実現している。

事業領域を拡張していくアイデミーが、今後どのように成長していくのか、引き続き注目していきたいと思います。

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