なぜ髙島屋は減収でも増益を達成できたのか?インバウンド頼みからの脱却へ

髙島屋は減収ながらコスト削減と資産売却で利益を維持し、国内顧客層堅調や構造改革により安定した収益基盤を構築している

決算が読めるようになるノート 決算解説
なぜ髙島屋は減収でも増益を達成できたのか?インバウンド頼みからの脱却へ
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髙島屋は老舗百貨店として全国の主要都市に店舗を構え、商業開発や海外展開にも積極的に取り組む総合流通企業です。伝統的な百貨店ビジネスを軸に、地域密着型の店舗運営と新たな収益源の確立を目指しています。



減収増益で着地した上期決算

株式会社髙島屋 2026年2月期(2025年度)第2四半期 決算説明会資料

2026年2月期(2025年度)第2四半期の連結決算は、総額営業収益が4,872億円と前年同期比3.9%減少しましたが、純利益は212億円と21億円の増加を記録しました。営業利益は237億円と減少しており、利益段階では明暗が分かれる結果です。

減収の背景には、前年に好調だったインバウンド需要の反動減や、春以降の高額品需要の一服があります。とはいえ、売上・利益ともに会社計画を上回る進捗を見せており、全体としては堅調な決算でした。

髙島屋の強みは、国内顧客の安定した購買力にあります。国内需要はインバウンドの減少をある程度吸収し、特に婦人服・雑貨・コスメ分野で堅調に推移しました。消費者の節約志向が続く中でも、実需と嗜好性のバランスを取った商品構成が奏功したとみられます。

国内需要は堅調、インバウンドは減速

株式会社髙島屋 2026年2月期(2025年度)第2四半期 決算説明会資料

国内百貨店の総額営業収益は4,018億円と前年を4.9%下回りました。背景には、インバウンド売上の落ち込みがあります。

株式会社髙島屋 2026年2月期(2025年度)第2四半期 決算説明会資料

上期のインバウンド売上は438億円で、前年の620億円から182億円(約29%)の減少となりました。特に高額品の販売減少が影響しており、為替水準の変化や中国人旅行客の購買動向の変化が響いたとみられます。

一方で、インバウンド需要が弱まる中でも国内顧客の購買行動は堅調でした。都心店舗では富裕層やシニア層を中心に高単価品の需要が底堅く、地方店舗では生活必需品やギフト需要が安定しています。髙島屋が長年築いてきた顧客基盤が減収幅を抑える結果となりました。

また、国内の購買層は「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしています。髙島屋はイベント企画や地域連携型の売場展開を強化し、単なる小売から「体験型百貨店」への転換を進めています。この戦略が、短期的な売上減を補う形でリピーター獲得につながっています。

コスト抑制が利益を下支え

株式会社髙島屋 2026年2月期(2025年度)第2四半期 決算説明会資料

上期の販管費は824億円で、前年より微増したものの、エネルギーコストや人件費上昇を吸収する効率化が進みました。同社は光熱費削減や業務フロー見直しを通じて生産性を高め、営業利益率を一定水準に維持しています。

利益面では、固定資産売却益の計上が純利益を押し上げました。本業では営業減益でしたが、資産効率の改善や保有不動産の再構成が寄与した形です。髙島屋はかねてから資産の入れ替えを通じて収益基盤を強化する方針を掲げており、今回の増益はその成果の一端といえます。

さらに、経費削減だけでなく、デジタル投資による業務効率化も進展しています。オンライン接客やOMO(Online Merges with Offline)戦略の拡大が、販売効率と在庫回転率の改善につながっています。DXを収益性向上の一手段として活用している点は、伝統的百貨店の中でも際立つ動きです。

通期計画は売上を微修正、利益は据え置き


《決算が読めるようになるノート》