A. Solana Labs社が発売したweb3スマホ「Saga」では、Solana Payを利用してP2P即時決済、秘密鍵の保管のセキュリティと利便性の両方を担保するなど、web3サービスの体験が良くなる。
何より、事業者へのプラットフォーム手数料がなくなることでdAppsが増えると、あらゆるサービスへのスマホアクセスが可能になる。
「web3スマホ」と聞いて、皆さんはどのような印象を持つでしょうか?
web3はハードウェアに依存したサービスレイヤーというわけではないので、なぜ専用ハードウェア(スマホ)が必要なのかと思われるかもしれません。
確かにパソコン、既存のスマホでも利用することができますが、web3スマホは「よりweb3サービスにアクセスしやすく設計されたスマホ」を指します。
2022年6月に、ソラナ(SOL)ブロックチェーンを開発するSolana Labs社がweb3スマホ「Saga」の予約受付を開始していました。そして、直近配送が開始されています。
そこで今回は、Sagaでできることや、web3スマホがどのようなものかを説明します。
web3はブラウザ上で利用されている
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最先端技術を用いて作られているweb3サービスですが、それらを使用する人を思い浮かべると、ほとんどがブラウザ上で使用されています。それも、ほとんどデスクトップPCです。
ウォレットなど一部サービスはアプリが出ていますが、特にNFTサービスレイヤーのほとんどはブラウザです。
事業提供者側から見た最も大きい理由は、「Apple税」とも言われるAppStore上のアプリ内での取引は30%の手数料の存在です。
NFT送受信時のガス代にも手数料がかかるとされるなど、ビジネスモデルを考えると実質NFTサービスのアプリは不可能といえます。Google(Android)も同様です。
ユーザー側から見ると、web3のシステムを想定したスマホにすることで、より便利なユーザー体験を得られることもあります。今はまだないものなので想像がつきにくいかもしれません。
この点は、この後Sagaが実現することのなかで解説します。
Solanaが「Saga」を発売
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2022年6月に発表されたSagaは、日本ではまだですが、アメリカ、カナダ、EU、イギリスでは2月から発送が開始されているようです。
Android OSのスマホで、6.6インチのディスプレイと512GBのストレージを搭載していますが、見た目は通常のスマホのようです。価格は$1,000(約10万円)と決して安くはなく、iPhoneなどと同じくらいです。
ちなみに、Sagaでは通常のAndroidストアに掲載されているアプリも利用可能です。そのため、完全に今世の中に出ているスマホが競合と考えられます。
Sagaがweb3スマホと呼ばれるに値するポイントは以下です。
1.Solana dApp Storeの存在
2.P2P送金トランザクションが可能
3.Seed Vaultのセキュリティシステム
4.開発者向けにSolana Mobile Stackを公開
これらを一つずつ紹介します。
1. Solana dApp Storeの存在
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Solana dApp Storeは、iPhoneでいうところのAppStoreです。ユーザーはストア上で好きなアプリを検索、ダウンロードすることができます。
そして何より大きいのが、事業者に手数料が発生しないという点です。
前述の通り、これまでアプリでは手数料が発生するため、多くのweb3サービスがデスクトップでの提供となっていましたが、
これによって、事業者のアプリ提供が加速し、ユーザー体験も向上すると考えられます。
Solana dApp Storeは、まずはSaga上でのみ利用することができます。今後広がり得るのか、またSolanaがdAppsのプラットフォーマーになれるのか、注目です。
2. P2Pトランザクションが可能
Sagaは、スマホに標準で組み込まれているSolanaPayを活用することでP2Pでの即時トランザクションが可能です。
これによって、取引所を介さず、事業者と消費者が直接取引ができるようになります。
上記のツイートは、2027年からのタイムトラベラーによるweb3イメージ動画として公開されたものです。このように、仲介者を挟まずに即時決済で商品を購入できるようになります。
こちらも手数料は不要です。
3. Seed Vaultのセキュリティシステム
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Seed Vaultは、秘密鍵をOS、ウォレット、アプリから分離して保管してセキュリティを担保しつつ、取引の即時署名を容易にするカストディ(暗号資産管理)プロトコルです。
2021~2022年はハッキングによる被害の報道が多くありました。それ故に最近のトレンドとして、セルフカストディが普及しています。
4. 開発者向けにSolana Mobile Stackを公開
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開発者向けに、dApp Storeへのアプリ開発を容易にする開発環境を提供しています。
web3エンジニアが世の中に少ないこともあり、まだ開発の実例が豊富とはいえません。そこで、分散型アプリを利用可能にするためのアンドロイド用オープンソースソフトウェアツールキットを公開しています。
2023年1月末より、アプリ開発者はアプリの提出ができるようになっています。今後、どのようなアプリが誕生するか、期待したいところです。
他社のweb3スマホ準備の動き
今日はSagaについて紹介しましたが、実はPolygon(Ethereumのスケーリングソリューションを提供)も、イギリスのNothing社と共にweb3スマホを開発中です。2022年7月に発表されており、「phone (1)」という名前がつけられています。
過去にも、台湾のHTC社、Sirin Labs社、Pundi X社が2020年頃にweb3スマホの計画を進めていました。しかし、当時はweb3スマホのニーズがなく、どれも結果的には失敗に終わりました。
少しずつ世の中への普及が始まりつつある今、スマホというハードウェア領域で勝つのはどこになるのか、引き続き注目です。
今回のSagaは、Solana限定です。他のチェーンは通常通りにMetaMaskなどを準備すれば使うことは可能ですが、まだまだユーザー体験として便利とは言い難いです。
他チェーンの動きにも注目ですし、何より、マルチチェーン対応のスマホが出てくることが待たれます。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
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過去のweb3事例集
【web3マガジン】事例#1: 暗号通貨レンディング Goldfinch
【web3マガジン】事例#2: 誰でもトップレベルドメイン (TDL) を保有可能にするNamebase
【web3マガジン】事例#3: ステーブルコインを発行・管理するMakerDAO
【web3マガジン】事例#4: 既存の銀行などが暗号資産を管理できるようにするFireblocks
【web3マガジン】事例#5: web3を学んでトークンをもらえるRabbitHole
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【web3マガジン】事例#7: セレブ・スポーツ選手のNFT販売マーケットプレイスEthernity
【web3マガジン】事例#8: 通信ネットワーク拡張を手伝うことでトークンを稼げるHelium
【web3マガジン】事例#9: DeFi投資を自動化するThetanuts Finance
【web3マガジン】事例#10: ブロックチェーンを活用したDropbox系ストレージArDrive