A. 両社ともにweb3の自社プラットフォームの構築に着手しており、web3への本気度が伺える
以前、国際的に有名なアパレルブランドやメーカーがweb3に積極的に取り組んでいる事例をご紹介しました。
これまでの各ブランドのweb3に関する事例は、OpenSea上でNFTの販売をしたり、ゲーム内で使えるアイテムを販売するなど、何らかのプラットフォーム上での取り組みがほとんどでした。
ここにきて、先進的なブランドが「web3の自社プラットフォーム」を持ち始めています。これはブランドがweb3の可能性を信じており、投資をしていくという意思表明です。
今日は、そんな大きな一歩を踏み出したNIKE、スターバックスの例を紹介します。
NIKEのこれまでの取り組み
NIKEは早くからweb3に目をつけており、2019年12月に「Cryptokicks」というスニーカーのNFTの特許を申請しました。スニーカーをイーサリアム上にNFTとして発行する特許です。
店舗でスニーカーを購入したユーザーが、そのスニーカーをウォレットアプリでスキャンするとスニーカーのNFTが発行され、デジタル上でも所有物として楽しむことができるというものです。
2021年11月にはオンラインゲームのRoblox上に、バーチャルショールーム「NIKELAND」をオープンし、アバターが着用できるナイキ製品が展示されました。

次に話題となったのは、2021年12月の「RTFKT Studios」の買収です。買収額は公表されませんでしたが、大企業がweb3企業のM&Aを行う事例として注目を集めました。
2022年4月には、REFKTはバーチャルスニーカーの制作を手掛けてきたデザインチームを「RTFKT x Nike Dunk Genesis CryptoKicks」と名づけてNFTのスニーカーラインを発表しました。
NFTGatorsが公表したデータによると、RTFKTを含むNIKEのNFTでの売上は$185.3M(約185.3億円)を超えており、また二次市場での販売量は$1.3B(約1,300億円)に達しています。
直近はNFT市場が不調なため、市場環境による影響を受けていると思われますが、NIKEはNFTで大きなビジネスの成果を出しています。
成功体験を得て、さらにweb3戦略を強化するNIKE

NFTの市場環境が悪い中でも、NIKEはさらに投資を続ける姿勢を変えていません。
2022年11月に、デジタルウェアラブルのコミュニティ構築を目的としたプラットフォーム「.SWOOSH」を発表しました。ついに自社プラットフォームを持つという決断をしました。
ゲームなどで着用できるデジタルのスニーカー、アパレル、アクセサリーを収集できるプラットフォームとなる予定です。現在ベータ版として欧米の一部ユーザーに向けて提供開始しており、今後対象地域を広げていくとのことです。
リアルな商品の入手や、アスリートやデザイナーとの交流イベントなども予定されており、他社プラットフォームでのNFT販売に加えて、自社プラットフォームだからこそ実現できる熱量の高いコミュニティ形成を進めているようです。
web3サービスを利用するユーザーを拡大するためのリアルの店舗とのコラボレーションも期待されます。NIKEのweb3戦略への本気度合いが明らかになり、今後が楽しみです。
スターバックスのこれまでの取り組み

続いて、スターバックスのこれまでの取り組みを紹介します。
スターバックスでは、圧倒的な店舗数と商品量を扱いながらも、トレーサビリティを担保することで、問題視されているコーヒー農家の過酷な労働環境や不公平な取引には加担しない姿勢を示してきました。
2020年8月に、Microsoftとの共同開発で、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムを実現しました。
このトレーサビリティシステムは、MicrosoftのクラウドサービスであるAzureでブロックチェーンネットワークを構築可能になる「Azure Blockchain Service」が活用されています。
Azure Blockchain Serviceでは、「Quorum」というエンタープライズ向けのブロックチェーンが現在サポートされています。
コーヒー豆のパッケージに記載されたコードから、コーヒー豆が栽培された地域、農家、おすすめのロースターの情報まで入手できるというものです。
スターバックスも本格的に参入

そして、2022年9月にスターバックスから注目のニュースが発表されました。NFTを活用したメンバーシップサービス「Starbucks Odyssey(スターバックス・オデッセイ)」です。
スターバックスは、「デジタルフライホイール」と呼ばれるデジタル戦略を推進しています。web3に関連しないので説明は簡単に留めますが、「リワード」「パーソナライゼーション」「注文」「決済」の4つのデジタル化を推進するものです。
その中のリワードプログラムをより強化するために、NFTを用いてStarbucks Odysseyを立ち上げると位置付けられています。
Starbucks Odysseyでは、「ジャーニー」と呼ばれるミッションに参加し、ゲームを通じてコーヒーやスターバックスに関する知識を深めることでNFTを獲得できます。詳細はまだ明らかにされていませんが、リワードプログラムの限定特典や、特別なコーヒー体験へのアクセスを提供すると発表されています。
また、Starbucks Odysseyは、スターバックスの「サードプレイス(自宅でも職場でもない第3のリラックスできる空間)」の概念をデジタル上でも作ることを目指しています。
2022年12月9日には、実際にサービスがリリースされています。
両社の基盤にはポリゴンが採用されている
今日はNIKE、スターバックスのweb3の取り組みを紹介しました。2社のプラットフォームに共通しているのは、両社ともにブロックチェーンの「ポリゴン」を基盤として採用していることです。
ポリゴンはイーサリアムのスケーラビリティ問題を解消するために開発され、「Polygon POS」や「Polygon zkEVM」などのソリューションを提供しています。
NIKEはポリゴンを選択した理由として、ポリゴンが持続可能性や環境問題を意識していることを挙げています。スターバックスも同様に、持続可能性の取り組みに沿った技術を活用することが最優先事項だったことを公表しています。
この2社以外にも、ポリゴンは持続可能性の観点で注目されており、またweb3戦略を掲げる企業への営業活動も注力されていると思われます。
ちなみに、ポリゴンは2022年4月に「グリーン・マニフェスト:地球とのスマートコントラクト」を発表し、2022年中にカーボンニュートラルを実現することも発表しています。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
今日は、世界的ブランドのNIKE、スターバックスのweb3戦略を紹介しました。まだweb3ユーザーが限られている中で、リアル店舗やアセットを沢山持っているブランドが参入することをきっかけにweb3がより広まることが期待されます。
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2022年4月より、「web3事例データベース」を開始しています。web3プロジェクトの調達情報、カオスマップ、事例集を週次更新で提供しています。web3の最新トレンドをいち早くキャッチしたい方は、こちらのnoteより詳細をご確認ください。
過去のweb3事例集
【web3マガジン】事例#1: 暗号通貨レンディング Goldfinch
【web3マガジン】事例#2: 誰でもトップレベルドメイン (TDL) を保有可能にするNamebase
【web3マガジン】事例#3: ステーブルコインを発行・管理するMakerDAO
【web3マガジン】事例#4: 既存の銀行などが暗号資産を管理できるようにするFireblocks
【web3マガジン】事例#5: web3を学んでトークンをもらえるRabbitHole
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