【web3】Q. 日本のメガバンクでweb3領域の取り組みが最も進んでいるのは?

A. MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)が早くから取り組んでおり、最も進んでいる。3社とも証券や資産のNFT化に注目している点は共通している。

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A. MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)が早くから取り組んでおり、最も進んでいる。3社とも証券や資産のNFT化に注目している点は共通している。


DeFiは比較的早くから注目されていた

web3の概念自体は新しいものではありませんでしたが、2021年にweb3領域は急激な盛り上がりを見せました。日経XTECHによると、2021年のブロックチェーン関連のスタートアップの資金調達額は、前年から8倍以上となったそうです。

2021年8月にはEpic GamesのFORTNITE上で歌手のAriana Grandeがライブを開催したり、2022年に入ってからは歩くだけで稼げるとSTEPNが話題になりました。このようにweb3領域に詳しくない人にも知られるニュースがいくつも出てきました。

それ以前から、web3領域の中でも特に上記で例を挙げたようなゲーム領域、DeFi(ブロックチェーンのスマートコントラクトを活用し、中央集権的な仲介者なしに取引を行う新たな金融サービス​​)は当初から注目されていました。

日本総研のレポートによると、2021年末時点のDeFiの市場規模は$100B(約10兆円)にも及びます。

また、上図は2019年7月時点のDeFiプロダクトのカオスマップです。その後ももちろん増えていますが、いかに早くから様々なプロダクトが世に出ていたかが分かります。

前述のDeFiの説明で「中央集権的な仲介者なしに取引を行う」と記載しましたが、既存の社会において、中央集権的な仲介者の最たる例が銀行です。

完全にweb3化される世の中が来るとは限らないとはいえ、DeFiの市場規模が大きくなると、銀行などの伝統的金融業は苦しい境地に立たされる可能性が高いです。それ故に金融機関は先んじて、web3に適応する動きをとっている会社が多いとも考えられます。

今日は日本のメガバンク3社のグループ(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社みずほフィナンシャルグループ)のweb3領域での主な取り組みをまとめてみます。


最も先進的なMUFGの取り組み

公開情報によると、3社の中でweb3への取り組みを最も早く始めたのはMUFGで、その時期は2019年11月でした。三菱UFJ信託銀行が提供するブロックチェーンを活用したセキュリティトークン(ブロックチェーン技術を活用して「有価証券とみなされる権利」を電子発行したトークン)の発行・管理プラットフォーム「Progmat(プログマ)」でした。

Progmatはブロックチェーンの「Corda」を基盤とし、日本円と1:1で交換可能なステーブルコイン基盤「Progmat Coin」が搭載​​されています。Progmat Coin上で発行されるステーブルコインは、2023年にも商用利用が開始される予定です。

第一弾は、国内初の不動産や社債をトークンとして発行するというもので、資産の証券化や管理を三菱UFJ信託銀行が担っています。少額の取引もブロックチェーンで自動で処理することで可能となっています。

この取り組みは国内初であり、保守的である金融機関の非常に早い参入であったことから、メディアでも多く取り上げられました。

2021年7月には不動産STO(不動産セキュリティトークンオファリング。不動産をトークンとして発行し、資金の調達を行った事例が誕生しました。現在に至るまで不動産STOは5件の実績があります。

また、2021年4月には連結子会社のGlobal Open Network Japan(GO-NET Japan。米Akamai Technologies​​との合弁会社)でブロックチェーン関連の決済事業をローンチしていました。

しかしながらタイミングが悪く、新型コロナウイルスの影響で決済件数が伸び悩み、その後事業撤退に至っています。。残念ながら決済事業は撤退しているものの、2018年以前からAkamai Technologies​​とブロックチェーンの開発をするなど、共同研究を積極的に行っていたことは驚きです。

Progmatのその後の展開としては、株主優待やサービスの利用権などのユーティリティトークン(デジタル優待権)​​を発行できる「Progmat UT」​​をローンチし、すでに東京ドームで導入されています。

さらに、複数のブロックチェーンを跨がった決済におけるステーブルコイン(法定通貨に連動するトークン)の​​適用について、「デジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)」で検討しています。

三菱UFJ信託銀行は、このDCCの中心的存在であり、上述のブロックチェーンを跨いだ決済(クロスチェーン決済)については、2024年までに商業化をすることを目指しています。


MUFGはweb3領域への投資も活発

MUFGは、グループ会社の三菱UFJキャピタルを通じて、web3領域のスタートアップへの投資も実行しています。2021年11月には法人向けにカストディサービスやウォレットサービス等を提供するブロックチェーン企業であるGincoの資金調達ラウンドに参加しています。

国内だけでなく、海外のスタートアップへも投資を行っており、2022年3月にはインド国内のスタートアップ企業を対象とした投資枠として$300M(約300億円)を設定したり、2022年8月には香港のweb3の先進プレイヤーであるAnimoca Brandsへ出資をしています。

Animoca Brandsとは資本提携だけでなく、事業提携も行っています。2022年3月にNFT事業に参入することを発表しており、事業はNFTの発行支援、マーケットプレイスの運営など幅広い事業を検討中であるという内容に留まっていますが、Animoca Brandsと協業することが公表されています。

このように、MUFGは早くからweb3領域の調査を開始し、投資事業も積極的に行い、自社でサービスローンチまで進めており、国内の金融機関の先導者となっています。


今年から取り組みを本格化させているSMBCグループ

続いて、SMBCグループのweb3領域での取り組みについても見ていきます。

SMBCは、2022年に入ってからweb3関連の動きが本格化しています。2022年3月に三井住友信託銀行で大きな金融商品開発が始められています。

三井住友トラスト・ホールディングス100%子会社のTrust Baseとともに、不動産や金銭債権に加えて、グリーンボンドやESG債、権利資産(特許など)や芸術作品までをデジタル資産化することを進めると発表しています。MUFGで紹介したNFT化と同様の取り組みといえます。

また、2022年5月には三井住友トラスト・ホールディングスは、暗号資産取引所を運営するビットバンクと共同出資をしてデジタル資産の信託会社を設立しています。海外でも投資家の代理人として資産の保管・管理を行う​​カストディサービスが増えており、この領域への参入となります。

デジタル資産の市場規模が大きくなると、個人投資家だけでなく、より機関投資家の参入が増えるので、カストディサービスは必須と思われます。

また、2022年7月には三井住友銀行がトークンビジネス関連のサービスなどを提供するHashPortとグループとともにNFT事業の検討を開始すると発表しています。これもMUFGのNFT事業同様に詳細は発表されておらず、今後のリリースに注目です。


みずほグループはメタバース×金融への取り組みも

みずほグループも2022年に入ってから取り組みを加速しています。2022年5月にみずほ信託銀行がデジタル証券の発行システムを提供する「BOOSTRY(ブーストリー)」を活用し、不動産のセキュリティトークン発行をスタートしました。

不動産のセキュリティトークン発行について、MUFGはProgmatという独自基盤を開発していますが、みずほグループは、外部基盤として、野村ホールディングスやSBIホールディングスが出資するBOOSTRYを活用することをしています。参入時期的に遅いこともあり、自社で基盤開発をしていると遅れをとることも一因かもしれません。

一方、みずほグループは他社にない動きをとっています。それは2022年7月に世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」に出展し、ATMや対話ブースなどを備えた銀行の店舗をメタバース上で構築すると発表しました。

海外ではJPモルガン・チェース銀行がメタバース上にラウンジを開設し、暗号資産に関する情報の提供をしていたり、国内ではSMBC日興証券が証券アナリストとの座談会をメタバース上で実施したりしているものの、銀行の店舗自体をメタバース上で開設するのは他社にない踏み込んだ試みです。

2022年9月には、デジタル資産基盤のブロックチェーン決済業者のFnality Internationalへ出資も実行しており、さらにまだ公表されていませんが、決済などの他の領域にも着目しているのかもしれません。


まとめ

今日は国内3社のメガバンクグループのweb3領域の取り組みをまとめました。

MUFGは非常に早くからweb3領域に着目し、独自基盤からサービスレイヤーまであらゆる取り組みを進めています。3社の共通点としては不動産などの資産のセキュリティトークン発行を行い、新たな金融商品とするというものでした。

ちなみに、メガバンクグループではないものの、野村ホールディングスは子会社を通じて前述のデジタル証券プラットフォーム「BOOSTRY」を提供したり、暗号資産のトレーディング事業「Laser Digital」をローンチしたり、NFT関連の新会社の設立をしています。他にも証券、保険会社もまだ多くはないものの取り組みが始まっています。

金融×web3領域のスタートアップの動きはもちろんですが、大手企業の動きにも注目です。

《決算が読めるようになるノート》