EV戦略の岐路に立つ自動車業界。全方位戦略で安定収益を稼ぐトヨタと、二輪の高利益を原資に大胆な軌道修正を進めるホンダ。両社の最新決算は、変革期における「勝ち筋」の違いを鮮明に映し出しています。
2027年3月期第1四半期 決算内容の比較

ホンダ(本田技研工業)の2026年4~6月期における連結業績は、売上収益が6兆615億円(前年同期比7,212億円増、+13.5%)、営業利益が5,307億円(同2,865億円増、+117.4%)となり、四半期として過去最高の営業利益を達成しました。また、税引前利益は6,050億円(同107.0%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4,509億円(同129.3%増)と、大幅な増収増益の強い決算となりました。
営業利益率についても前年同期の4.6%から8.8%へと4.2ポイント急改善しています。前年同期に計上されていた1,220億円のEV関連損失が発生しなかったことに加え、為替の円安効果(対米ドルで159円、前年同期比14円の円安)が908億円のプラス要因として寄与しました。通期見通しについても、為替前提を1ドル155円に見直したことで、営業利益予想を前回発表から1,500億円上方に修正し、6,500億円(調整後営業利益は1兆1,700億円)としています。

一方、王者トヨタ自動車の2026年4~6月期における連結業績は、営業収益(売上高)が13兆5,254億円(前年同期比1兆2,720億円増)、営業利益が1兆634億円(前年同期比1,026億円減、△8.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益が1兆4,770億円(前年同期比6,356億円増、+75.5%)となりました。
資材高や諸経費の増加により営業利益は前年同期比でやや減益となったものの、売上高は13.5兆円を超え、四半期の営業利益で1兆円、当期利益で1.4兆円を超えるという、世界中の自動車メーカーを寄せ付けない圧倒的な事業スケールを示しています。営業利益率も7.9%と高い水準を維持し、持分法投資損益の拡大(2,106億円)なども手伝って最終利益を大きく伸ばしました。
両社の決算実績を比較すると、トヨタが13.5兆円の売上高と1.4兆円を超える当期利益という圧倒的な「規模と財務的底力」を見せつけているのに対し、ホンダは6兆円超の売上収益に対し5,307億円の営業利益を叩き出し、前年同期比で営業利益を2倍以上に伸ばす劇的な「業績V字回復」を決めた構図が鮮明になっています。
セグメント・事業別に見る収益構造の違い

両社のビジネスモデルを解剖する上で最も興味深いのが、収益構造(セグメント構成)の根本的な違いです。ホンダの強みは、四輪メーカーであると同時に「世界最大の二輪車メーカー」である点にあります。
ホンダの事業別業績を見ると、二輪事業の強さが際立っています。第1四半期の二輪事業はグループ販売台数が566万3千台(前年同期比10.1%増)に達し、売上収益1兆1,411億円に対し、営業利益は2,339億円(同23.8%増)を記録しました。営業利益率はなんと20.5%に達し、四半期として過去最高を更新しています。インドやブラジルなどの新興国市場における堅調な需要を捉え、圧倒的なマーケットシェアとコストパフォーマンスで「利益率20%超」というハイテク企業並みの稼ぎ頭となっています。
これに対し、主力である四輪事業は売上収益3兆8,073億円、営業利益1,921億円(利益率5.0%)となり、二輪事業が四輪事業の利益額を上回る構造となっています。さらに、販売ローンやリースを担う金融サービス事業が売上収益1兆270億円、営業利益1,058億円(利益率10.3%)と手堅く利益を底上げしています。

一方、トヨタの収益構造は「四輪事業の圧倒的な力」、そしてそれを補完する「金融事業」で構成されています。
トヨタの自動車事業は、高級車「レクサス」から量販車「ヤリス」「カローラ」、大型SUVやトラックまでフルラインナップを揃え、全方位で高い収益性を発揮しています。地域別で見ても、日本国内だけでなく、北米、ヨーロッパ、アジアの各主要市場で数百億円~千億円規模の営業利益を着実に稼ぎ出すという、極めて分散され安定したポートフォリオを持っています。また、金融事業も四半期で手堅い利益を生み出し、新車販売の強力な推進力となっています。
両社を比較すると、トヨタが「圧倒的な四輪のグローバル展開と全方位モデルによる高収益」を実現しているのに対し、ホンダは「利益率20%を超える最強の二輪事業が、変革期にある四輪事業と電動化投資を強力にキャッシュで支える」というユニークな二刀流の収益構造を構築していることが分かります。
主力四輪事業における業績向上・構造変革の取り組み
四輪事業における戦略展開では、世界的な市場環境の変化に対するアプローチの違いが顕著です。

ホンダの四輪事業における第1四半期の調整後営業利益は、前年同期の923億円から1,921億円(利益率5.0%)へと大幅に改善しました。増減要因を見ると、インフレに伴う原材料高騰の影響(売価/コスト影響で19億円の減益要因)や販売奨励金(インセンティブ)の増加(288億円の減益要因)があったものの、北米市場を中心とした販売台数の伸びや、価格改定効果(380億円)、さらには為替影響(522億円増)と関税影響の改善(816億円増)が利益を大きく押し上げました。
地域別では、現地メーカーとの価格競争が激化する中国やアジア市場で台数が減少(アジアの四輪販売台数は前年同期比75千台減の127千台、うち中国は74千台減)し苦戦が続いているものの、最重要市場である北米において46万1千台(前年同期比4千台増)と着実に伸ばし、業績の下支えに成功しています。
対するトヨタは、「マルチパワートレイン(全方位)戦略」の果実を全面的に収穫するフェーズに入っています。
世界的にEV(電気自動車)の普及スピードが鈍化し、現実的な選択肢としてHEV(ハイブリッド車)が見直される中、世界最高のハイブリッド技術と量産体制を持つトヨタに追い風が吹き荒れています。「プリウス」や「ハリアー」「RAV4」などのHEVモデルは極めて高い利益率を誇り、北米や欧州、日本市場で高い需要が継続した状態が続いています。トヨタは「TPS(トヨタ生産方式)」による継続的な改善と原価低減を全社で徹底しており、原材料高や労務費の上昇を飲み込みながら、世界トップクラスの稼ぐ力を維持しています。
中国市場の価格競争という共通の課題に対し、トヨタはHEVの強みとブランド力で持ちこたえつつ現地適応を進める戦略をとる一方、ホンダは北米でのガソリン車・HEVの効率的な販売と二輪事業のキャッシュインで中国の減速分をカバーする構造をとっています。












