完全保存版【國光さん聞く】web3とメタバース 対談書き起こし(前編)

シバタ:今日はありがとうございます。

Web3事例データベース 業界動向
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シバタ:今日はありがとうございます。

國光さん(以下、敬称略):よろしくお願いします。

シバタ:今、ご参加いただいている方に「どんな話を聞きたいですか」という話をずっと聞いていたら、たくさんコメントが来ました。全部拾えていないのですが、プロレスを見たいという人もいます。(笑)どこから始めましょうか?

國光:実際、本を出版してから、本の内容についてのセッションは結構行いました。今日はせっかくシバタさんとのウェビナーですので、本の内容に沿わなくても…。本の内容についてざっくり言うと、メタバースとWeb3に関して歴史を踏まえたかたちでものすごくきちんと体系的に語っているはずです!

シバタ:本当にその通りですよ。本の出版は、尾原さんにオススメされて書かれたという説がありますが。(笑)

國光:そうそう。昨年12月に、ちょうど尾原さんのサロンでこういう話がしたいと言われて、そこで話をしたら「すごく面白いから、ぜひ本にしましょう」という感じになりまして。尾原さんに「3時間ぐらい話したら本になるよ」と言われて、3時間ぐらいだったらいいかなと思って始めました。
そうしたら、年末にかけて結局インタビュー時間が13時間ぐらいになり、年が明けて上がってきた原稿を見たら結構しんどい内容で、何回直してもなんともならないから、結局、最終的に構成から全部自分でやり直しました。

シバタ:それは一番つらいパターンですね。(笑)

國光:そうなんです。しかも、本というのは最終的になぜか締め切りを決められますよね。

シバタ:はい、決められますね。

國光:そして、最後に恐ろしい選択になってくるのが、不本意なかたちで出るのか、ものすごく頑張って直すか、この二択しか僕にはないんですよね。

シバタ:そうですね。(笑)

國光:やめるという選択肢がなぜかない、という感じになってくるんです。だから、もう最後は必死に週末は部屋にこもって書きました。だいたい部屋にこもって書いていると、やばい…となりますよね。

シバタ:なります。

國光:少し気を落ちつけようと思って酒を飲んだら考えられなくなってきて、仕方がないから次はコーヒーを飲んで…という感じで。(笑)

シバタ:分かります。(笑)

國光:ですので、まだ購入されていない方はぜひ。本当に僕は40歳を超えてから初めて泣きそうになりました。創業してから、最後の締め切りの1週間が一番しんどかったのではないかなと思います。

シバタ:いやー、本当ですよね。

國光:ほぼ泣いてましたよ、もうこれは。(笑)

シバタ:「泣いたの?」というコメントもありますね。笑 でも、本は出版社には出版社なりの都合があるので、本当に大変ですよね。では、どうしましょうか。

國光:今日はせっかくシバタさんとですから、シバタさんが聞きたいことと、あとは質問という感じでいく方がおそらく面白いのではないでしょうか。

シバタ:了解です。僕は、大した資料ではないのですが、せっかくですので、一応、簡単に準備をしました。どの辺からいきましょうかね。プロレスの話は皆さんあとで聞きたいと思いますので、取っておきますね。

國光:シバタさんのあの投稿は、はっきり言ってナンセンスですね。

シバタ:本当ですか。来ましたね!

國光:(笑)

シバタ:これはあとでやりましょうか。

國光:了解です。(笑)

質問#1: gumi Cryoto Capitalが大成功しているのはナゼ?

シバタ:では最初に、國光さんと言えば、Web3のCrypto系の会社など、たくさんメタバースに投資されていて大成功されています。特に、OpenSeaに投資されたのは結構前ですよね。どのように、なぜそんな良いところに投資できたのですかという話をみんな聞きたいのではないかと思います。

國光:では、ざっくり自己紹介というか、最初に私がしていることをお話ししますね。

gumiという会社を昨年7月に退任しまして、今は大きく3つのことをしています。1つ目はThirdverseというVRの会社、メタバースの会社です。2つ目はFiNANCiEというブロックチェーン、Web3の会社です。3つ目はgumi Cryptos Capitalというファンドです。最初の2つについては、僕はファウンダー兼CEOという感じで、ファンドについてはGP兼MPをしています。Thirdverse、FiNANCiE、両方とも100名ずつぐらいの会社です。

Thirdverseでは、ガチのハイエンドなVRゲームをつくっているのと、もう1つはWeb3系のブロックチェーンゲームのパブリッシング業務をしています。今、日本の上場会社が自分たちでWeb3ゲームをつくろうという動きがあります。Web3ゲームというのは、やはりNFTだけではなくて、絶対にトークンの発行というのがマストになってきますので、これをしようと思うと、規制の面や税務の面、また会計監査の問題があり、単独ではできないんですね。そのため、僕らがそこをサポートするということをしています。

次にFiNANCiEです。ここは結構詳しい人が多いと思いますが、ここ自体は4年前にサービスを始めました。FiNANCiEというのは、誰でも簡単にDAOがつくれて、トークンやNFTを日本の法律の中で合法なかたちでできるプラットフォームです。このトークンとNFTは自社の流通マーケットで売買できるので、需給に応じて価格が上がったり下がったりする、そういう感じのDAOが誰でも簡単につくれる、そういうプラットフォームをFiNANCiEで提供しています。

FiNANCiEは特にスポーツ領域に力を入れていて、今まで50チームがFiNANCiE上でトークンやNFTをすでに発行しています。加えて、最近では、個人がトークンを発行したらどうなるかということで國光DAOというのも始めました。國光DAO自体は、Web3やメタバース領域で日本初で世界で活躍する起業家やスタートアップを増やしたい、そういうところをしています。FiNANCiE自体は、ちょうど昨年発表しましたが、今、コインチェックさんの方で今年の夏を目標に国内でのIEOを目指して取り組んでいます。

Web3ファンド、gumi Cryptos Capitalについては、1号ファンドは$21M(約21億円)、2号ファンドは$110Mですので130億円ぐらいですかね。

シバタ:すごいですね。

國光:そういうファンドがスタートしたということで。1号ファンドは本当にパフォーマンスがすごくて。

シバタ:そうですよね。聞いている限り、すごいですよね!

國光:そうそう。21億円が4年で600億円ぐらいになっていますよ。

シバタ:おおー! これはもう、出資していた人はみんなウハウハですね。

國光:みんなウハウハだと思います。(笑)

シバタ:すごいですね。

國光:結構、特徴がありまして、ちょうど2018年の3月に正式には設立されたかたちですが、やはり大きなポイントというのが僕は2つあったと思います。

1つは、トークンにもエクイティにも出資ができる点です。最終的には36社出資して、20社がトークンで、16社がエクイティという感じですね。
シバタ:トークンというのは、エクイティを取らずにトークンだけを買ったということですか。

國光:厳密に言うと、エクイティを持ってトークンというケースもあります。投資主体がトークンなのか、投資主体がエクイティなのかという感じで思っていただくといいと思います。

シバタ:なるほど。

國光:それでいくと、20社、16社ぐらいという感じです。OpenSeaはもちろんエクイティだけという感じですけれども。

もう1つは、ひょっとしたら今日の最後の「激論」のところにも入ってくるかもしれないところですが、やはりかなり早い段階でシリコンバレーに入ったというのも1つ大きなところかなと思っています。

シバタ:そうですね。

國光:結局、2018年の当初の感じでいくと、ちょうどICOなどのバブルが終わってCrypto冬の時代という感じで、やはりこの仮想通貨のところの初期はシリコンバレーは完全に出遅れたんですね。

シバタ:そうですね。

國光:一番最初に流行ったところは、やはり怪しい国。

シバタ:(笑)

國光:怒られるかもしれませんが、ロシアだったり、中国だったり、東欧だったり、東南アジアだったり、やはり自分の国の政府や自分の国の通貨をそんなに信頼できなくて、そこから自分の資産をDecentralizedさせたいという、ここがやはりすごい強いと思います。

シリコンバレーが出遅れた要因は結構シンプルで、やはりアメリカという国とドルという通貨に対する信頼が強過ぎたから、その結果、出遅れたという面はあるんだと思います。

多くの日本のVCはいまだにトークンに出資できないんですね。日本のファンドでトークンにも出資できるところは、うちと、田中章雄さんのところのIVCと、最近、創太くん(渡辺創太氏)たちがシンガポールでつくったファンドくらいです。

海外はSequoiaもa16zも、彼らはもう気にせず全部投資しているかたちです。ただ、4年前の当初でいくと、やはり両方に投資するところは世界でも結構少なかったんですね。また、シリコンバレーにガッツリ張ったところも結構少なかったです。そういった意味でいくと、割とこの辺がすごく成功した1つの大きな理由なのかなと思います。

シバタ:すごいですね。いや、今から投資するのなら分かりますが、4年前にそこまで見越していて、シリコンバレーが出遅れている、かつ、多くのファンドがトークンに入れられないというのを見越して、そこのオープンスペースを見事に切り込んだわけですよね。すごいですね。

國光:そう。今回の大きな流れ、投資戦略にもつながりますが、僕の中でいろいろ投資したり起業したりしていてすごく思うのが、スタートアップが成功するための条件として、起業家の能力だったり、あとはチーム、技術力、資金力などいろいろ言ったりしますよね。

シバタ:はい。

國光:ただ、僕は正直、その辺は誤差だなと思っているんです。

シバタ:なるほど。(笑)

國光:そうそう。ダントツで重要なことはマーケットとタイミングだなというのは思っています。マーケットとタイミングさえ合えば、きちんとすれば成功するし、これが違っていれば何をしてもしんどいという感じだと思うんですね。

シバタ:確かに。

國光:その証拠に、モバイルゲームでも当初は何を出しても当たったんです。

シバタ:なるほど。

國光:今はスマホ自体が成熟期に入りましたよね。すると、何を出してもしんどい。

シバタ:そうですね。常に競争ですもんね。

國光:そう。結局、僕はすべての産業というのが成長曲線だと思っています。イノベーターが入って、アーリーアダプターが入ってきて、キャズムを超えて成長期に入って、成熟期に入ってというような。基本的にはすべての産業がこの成長曲線というのをたどっていくと思います。

この成長曲線の成熟期に入ってくると、もう新しいお客さんが入ってこないので、既存のところからお客さんを奪うしかなくなるんですね。そうなってくると、なかなか新規のユーザー獲得が難しくなってきてしまいます。そのため、やはりこの成長期に入るタイミングで事業を始めるというのがダントツで成功率が上がるのかなと思います。

では、この成長、パラダイムというのがどのようにして起こるかで言うと、結構、僕が信じているのは、「新しいテクノロジーが新しいパラダイムを生む」ということです。

ちょうど僕が起業を始めた2007年というのがすごく面白い年で、まず、iPhoneが出たんですね。そして、Twitterも出て、ソーシャルネットワークが伸びたんですね。この前後にAWSも出たんですね。つまり、この10数年間は、一言で言うと、スマホ・ソーシャル・クラウドの時代だったと思っています。

このスマホ・ソーシャル・クラウドというテクノロジーがほぼ同じ年に出たという偶然。勝った会社がやったことは、スマホファースト、ソーシャルファースト、クラウドファーストで既存にあったサービスのUI/UXを1から再発明したところが勝ちました。

ぜひこれを見ている人は、このあとGAFAMと言われているビッグ5、ここの時価総額をあらためて見てほしいです。これはMicrosoftを含めたこの5社の時価総額は、昔から大きかったのではなくて、ほとんどが2009年、2010年ぐらいから急速に伸びているんですね。

シバタ:そうですね。

國光:これはぜひ皆さんこのあとチェックしてほしいのですが、本当にびっくりするぐらい2010年ぐらいからなんですね。つまり、シンプルに言うと、結局、このスマホ・ソーシャル・クラウド×グローバリゼーションという波で彼らはここまで大きくなった。逆にいくと、日本はその波に乗り遅れて沈没していったという、そういう敗戦の10年だと思っています。

ただ、このテクノロジーが10数年経っていよいよ成熟期を迎えてきたというのがここ最近だったと思っています。最近の日本のスタートアップのほとんどが、これは日本のスタートアップだけではないのですが、結局、C向けのサービスはニッチなスマホアプリか、DtoCか、インフルエンサー系しかありません。toBもニッチなバーティカルSaaSばかりなんですよ。結局、おいしいところは先に始めた人が取ってしまって、おいしくないニッチなところしか残ってないというのが現状ということだと思っています。

では、スマホ・ソーシャル・クラウドの次のトレンド、パラダイムは何だと考えたときに、僕の中ではデバイスは、PCからスマホになって、これがVR、ARグラスに変わっていくと考えています。先ほどのソーシャルはデータのことで、もともとはWebサイトであったのが、個人データ、ソーシャルデータになって、これがブロックチェーンに変わってきます。そして、データをどう活用するというのがAWSからAIになっていくという感じで、次の大きなパラダイムは間違いなく、XR・ブロックチェーン・AIだろうというのが入口です。

シバタ:なるほど。

國光:最近は、VR、AR、MRがリブランディングされてメタバースになって、仮想通貨、暗号資産、Crypto、ブロックチェーンがリブランディングされてWeb3になったと思っています。

シバタ:それはアグリーです。

國光:そういった意味で言うと、メタバース・Web3・AIというのが次の大きなトレンドなのかなと思います。

シバタ:その3つのトレンドのうち、2つに本張りされてきたわけですよね。でも、それを2018年ぐらいのタイミングでできた人って、世界でもほとんどいないと思うんですよ。だから、すごいなと本当に思うんですね。「個人でgumi Cryoto Capitalに投資したいです」という質問が来ていますが、LPの投資、できるのですか、無理ですか。

國光:個人は難しいんですよね。適格投資家だったら大丈夫ですよ。

シバタ:適格投資家ならできるそうです!

國光:とはいえ、2号ファンドはもうクローズしてしまいましたので、次、3号ファンドをつくるときにぜひ!

シバタ:3号ファンドだったらいける。

ブロックチェーンをどう見るかが大きな分かれ道

國光:ここのOpenSeaの話ですが、そういう中で、僕は、結構、成功する、失敗する会社を比較して思うのは、要するに、これはスマホのときの例ですが、スマホが出てきたときに、多くの会社はガラケーで流行っていたものや、PCで流行っていたものをスマホに移そうとしたんですね。でも、こういうのはだいたい全部失敗して、勝った会社はスマホならでは、スマホファーストでUI/UXを再発明したところが勝ちました。要するに、スマホでないとできないことというのをやったところが勝ったと思っています。

例えば、LINEにしても元々チャットサービスはPCでありましたし、メルカリのようなマーケットプレイスもありました。パズドラやモンストのようなゲームもありましたし、やはり勝った会社は既存のところを移植などではなくて、スマホファースト、スマホならではというところをやったところが勝ったと思っています。ブロックチェーンの初期も、多くの会社はブロックチェーンでなくてもできることをわざわざブロックチェーンでしようとしました。

これは、ブロックチェーンをまったく新しいイノベーションと見るのか、新しい効率の良いデータベースと見るかによって見える景色が変わってきます。新しいデータベースという感じで見ると、DXを進めて、経費、コストを20%、30%削減という夢のない話になってしまうんですね。

でも、ほとんどの会社がそういう捉え方しかブロックチェーンはしていなくて。当時、多くの人たちが「仮想通貨は怪しいが、ブロックチェーンは有用なテクノロジーだ」と真顔で言っていました。

シバタ:今もいますよ。

國光:ブロックチェーンを新しい種類のデータベースと見ると、別にそこで20%、30%削減してどうだという話です。でも、まったく新しいイノベーションと見ると、ビットコインはできて13年ですが100兆円、イーサリアムはたった8年ですが50兆、そういうものが無から生まれているんですね。

そうやって考えたときに、では、既存であるものをブロックチェーンでつくっても大きなインパクトがなくて、では、ブロックチェーンでないとできないことって何なんだろうと考えたときに、僕の中では大きく3つあるなと。これは増えるかもしれませんが、今のところ見えているのが3つかなと思っています。

1つ目が、やはりトラストレスで自律的に動くディセントラライズドなネットワークというのと、2つ目がNFT、3つ目がDAOという感じというのを初期からずっと思っていました。

ここのOpenSeaに戻ると、どう考えてもNFT、要するにデジタルデータがコピーできなくて、資産性を持つというのは今までなかったから、これはすごいことです。では、NFTというのが、これはブロックチェーンならではの特徴だったとしたら、どういう会社、どういうスタートアップが勝つだろうと考えると、やはり3つあると思っています。

1つはNFTを使ったコンテンツをつくる会社、2つ目はNFTというのが流通するマーケットプレイス、3つ目はNFTが流通するプラットフォーム、これがイーサリアムやポリゴンといった話ですね。このような会社が大きくなってくるだろうと思っています。

OpenSeaの話でいくと、メルカリやeBayは絶対勝てないと思ったんですね。理由はブロックチェーンファーストではないから。既存の会社がNFTを入れても絶対に勝てないから、絶対にNFTファースト、ブロックチェーンファーストなマーケットプレイスが勝つと思っていました。

当時、3年半ぐらい前にマーケットプレイスをしているところを探したら、世界に3社しかなかったんですね。それがOpenSeaとWAXとOriginというところで、その3社とも全部に投資しました。

シバタ:よく投資できましたね。(笑)普通は1社投資すると「隣はやめて」となりませんか。

國光:そこは結構、投資のところで僕と一般のVCは違うんです。
ちなみに僕はファンドをいろいろしていますが、おそらく僕のパフォーマンスは普通のVCよりすべてのファンドで圧倒的に上だと思うんですね。

理由は明確で、通常のファンドは1業種1社や分散投資といった、わけの分からないことをしているんですね。でも、これって本当にばかばかしい話だと思います。結局、1業種1社や分散投資の場合、結局、その投資した領域に関しては起業家の方が詳しいんですよ。そうすると、VCができるバリューアドはお金を出すしかないんですね。今はお金がコモディティになってしまっているから、要するに何の価値もないということになってしまうんですね。

僕らの場合は領域を絞って徹底的に投資するから、その領域に関して僕らの方が圧倒的に詳しいんですよ。しかも、コネクションやネットワークも僕らの方があるんですよね。だから、僕らに投資してほしいとなってくるんです。

シバタ:それも面白いですね。

國光:そして、もう1つ思うのが、結局、競合に出して云々言いますが、結局、伸びている市場では競合なんて関係ないんですよ。

シバタ:まあまあ、そうですね。

國光:結局、モバイルゲームでも一体何社が成功したんだという話ではないですか。

シバタ:そうですね。

國光:もちろん成熟期になってくると、やはり競合とはシェアの奪い合いになってしまいます。でも、成長期においては競合は関係なくて、自分たちがやるべきことをすれば成功します。

それでいくと、結局、OpenSeaは、僕らが出したときは数十億円前半のバリューだったものが、今は1.8兆ぐらいになっていますが、その他のWAXとOriginも今はユニコーンになっているんですね。マーケットプレイスも普通に考えると、1位がシェアのおそらく4~5割獲りますが、5~6位ぐらいまでは残りそうですよね。

シバタ:いや、残ります。その4~5割も獲れないかもしれないですよね。Amazonがアメリカでいくら勝ってるといってもシェアは35%ぐらいですよ。そんなものだと思いますよ。

國光:そんなものですよね。

シバタ:そんなものですよ。

國光:そうそう。しかも、結局、僕らが出資したいときってみんな3人ぐらいのチームでしたから。分からないですよ、3人のチームのどれが勝つかなんて。

シバタ:分からないですね。(笑)

國光:みんなガチガチのシリアルアントレプレナーなら話は別ですが、みんなもともとAirbnbやPinterestといった良い会社では働いていましたが、ファーストタイムアントレプレナーなんですよね。

そういう中で、ここも普通のVCと違うなと思うのが、普通のVCはオポチュニティに投資するんですよ。案件が来てデューデリして決める感じなんですね。僕らは基本的にそんなことしなくて、「こういう領域が絶対来る」というのを決めて、その領域で会社を探して、その中で有望な会社に投資するという、この辺が結構大きな違いのような気がしますね。

シバタ:割と自分たちで探しに行く感じなんですね。

國光:もちろんです、もちろんです!

シバタ:すごい。面白いですね! ありがとうございます。

質問#2: 國光さんがこれまでで一番衝撃を受けたweb3プロジェクトは?

シバタ:今でこそみんなWeb3、メタバースと言っていますが、2018年、2019年の時点でそこに投資するというのはなかなか、やはりすごいなと思います。

シバタ:では、2つ目の質問です。今までで一番衝撃を受けたWeb3系のプロジェクトは何ですか。これは衝撃だなという。

國光:でも、あまりなくて。あまりないと言ったら変なのですが…。いや、あります。危うく投資をパスしかけたのですが、YGGというゲームDAOのサービス、知っていますか。

シバタ:分かります。

國光:YGGというサービス、これはYield Guild GamesというものでNFTのレンディングサービスといった感じのものです。最初のコンセプトが、例えば僕は金持ちで投資家でNFTを持っていたとします。このNFTはただ持っていても金利がつきませんので、それを貸し出します。貸し出すと、借りた人から一部金利が入ってきます。そういうサービスです。

当時、DeFiがとても流行っていたんですね。DeFiの中で、例えばCompoundなど自分のトークンを預けると金利がもらえますというレンディングサービスがありました。うちが出資しているもので言うと、Celsiusも同じく自分の持っているトークンを預けたら金利がもらえます。

DeFiのレンディング型のサービスは実際どういうメカニズムか説明します。例えば僕らの投資先のCelsiusがあって、これも今、時価総額3,000億円~4,000億円なのですが…。

彼らのモデルは、まず僕らはビットコインやイーサリアムやステーブルコインを持っていますと。ただ、持っていても金利がつかないから、これをCelsiusに預けるんですね。そうすると、預かり金利のような感じで2~5%ぐらい、ものによってもらえます。Celsiusはこれを貸し出すんですね。ここの貸出金利は7~12%取りますと。この差額がCelsiusの利益になります。今、Celsiusの預かり資産は2兆円を超えているんですね。

ただ、このモデルでは、Celsiusは主にヘッジファンドに貸し出しているんですよ。ヘッジファンドはビットコインやイーサを借りて、主に空売りを仕掛けるんですね。今の仮想通貨は、基本的にデリバティブがまだ整備されていないので機関投資家が仮想通貨投資を始めようと思うと、買いから入らざるを得なかったりするんですよ。でも、投資、投機というか、トレーダーからすると、おいしいのは売りからなんですね。というのも、結局やはりリテールの投資家が多いから、悪くなると狼狽して売りまくるんですよ。

シバタ:分かります。

國光:だから、結局、例えばCelsiusから借りた機関投資家は、悪い材料が出て落ちたタイミングで思いきり空売りを仕掛けるんですね。仕掛けまくって、そこからだいたい1カ月間ぐらいかけて拾っていくんですね。

シバタ:はい。落ちてきたところで買うということですね。

國光:そうなんです。今、そこの空売りは、仕掛けるものの規模が大きければかなり儲かります。そのため、DeFi、ここは要するに個人から借りて、でも、空売り筋からすると、年間金利を10%、12%払っても今なら十分儲かりますよね。

シバタ:そうですね。

國光:というので、確かにこれは分かるなという感じで思っていました。YGGは、これをNFTで行うと言い出したんですね。確かにNFTを持っている人の多くは将来の値上がり期待で持っているんですね。でも、持っているだけでは金利もつきません。だったら、それを預けて金利がもらえたらいいよねという話になって、それは確かにそうだよと。

シバタ:それはそうですね。

國光:でも、「誰が金利を払って借りるの?」というので、こんなの成立しないだろうと最初は思って、危うく投資を断るところでした。でも、最終的には考えを改めて投資しました。(笑)結局、YGGの貸出先は誰になったかと言うと、面白いのが、主にアクシー・インフィニティ上でよく使われたんですね。

聞いている人にブロックチェーンゲームの構造、play-to-earn、ゲームをしながら稼ぐというのがどういう構造かというのを超シンプルに言うと、ポケモンゲームのような感じです。ポケモンカードがすべてNFTで、このNFTをお金を払って買ってデッキを組んで、ミッションしたりバトルするとゲーム内トークンがもらえて、このゲーム内トークンが仮想通貨なので、これを売るとお金になる。これが、だから、ゲームをしながらお金を稼ぐ、play-to-earnというモデルなんですね。

ただ、このplay-to-earnモデルのブロックチェーンゲームの最大の問題点は、最初、ゲームを始めるときにNFTを買わなければいけないんですよ。

シバタ:そうですね。

國光:このNFTを買うのが数十万ぐらいするんですね。

シバタ:高過ぎる問題があるのですね。なるほど。

國光:そうです。ここで結構大変なのが、結局、NFTを買うような投資家は、別にゲームをしたいわけではないんですよ。でも、逆にゲームをしたいような若い子は高くて買えない。この問題が大きくあって、これを解決したのがYGGです。

シバタ:面白い。

國光:僕が投資家だったとしたら、NFTを貸して、それをYGG経由で貸し出して、ここで若いお金のないユーザーがそのNFTを使ってゲームをプレーして、稼いだお金の30%ぐらいがNFTを貸した人に戻るんですよ。

シバタ:結構、取りますね。(笑)面白い。なるほど。

國光:そうなんです。面白いなと思ったのが、アクシーのベースがフィリピンだったというのもありますが、当時フィリピンの農民の間でYGGが爆流行りしたんですね。ただ、これはファーミングと言われたんですね。よくよく考えると、これは農家では当たり前のビジネスで、地主と小作なんですよ。

シバタ:分かります。

國光:小作人は、土地やトラクターを地主さんから借りて、あがりの何%を地主に渡しますよね。ある意味それに近かったんですよね。

シバタ:僕が子どもの頃、皆さんと世代が同じかどうか分かりませんが、ドラクエやファイナルファンタジーが出ると、僕は普通に親に買ってもらっていましたが、買えない子は借りて1週間でクリアするんだということをしていましたよね。それに近いですね。

國光:そうそう。近いですね。

シバタ:面白い。(笑)

國光:これは最初にパッとNFTのDeFiと聞いた瞬間、「何でもDeFiにしたらいいというわけではないよ」と思いましたが、よくよく考えると「なるほどね」と納得しました。最終的に高いときで時価総額6,000億円ぐらいまで行きましたからね。

シバタ:いいですね。でも、分かりますね。

國光:あれは結構度肝を抜かれましたね。

シバタ:なるほど。面白いですね。NFTのDeFiと言われたら、何となくイメージ的にはデジタルアートを貸し出してどうするんだっけというイメージをしてしまいますが、確かにそうですね。ゲームに入るためのトークンを買えない人がいる、高過ぎて買えない問題があったというのは確かにいいと思います。

國光:金融の方は割と面白いですよ。そろそろ発表しますが、つい最近投資したところで言うと、NFT版のBNPLとかね。

シバタ:面白いですね。

國光:どう考えてもありそうですよね。

シバタ:絶対ありそうですね。いいですね。

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以上が前編です。後編は、「シバタの「アメリカは国家戦略でweb3に重点フォーカスしている」発言がズレていると思う理由とは?」などを議論しました。乞うご期待!

《決算が読めるようになるノート》