国際線の需要回復と燃油高の波が押し寄せる航空業界。グループ規模と貨物・LCCの積極展開で攻めるANAホールディングスと、高収益なマイル・金融事業と外貨獲得構造で耐性を強める日本航空。両社の最新決算は、変動期における事業ポートフォリオの違いを映しています。
2027年3月期第1四半期 決算内容の比較

ANAホールディングスの2026年4~6月期(2027年3月期 第1四半期)における連結業績は、売上高が6,727億円(前年同期比1,240億円増、+22.6%)となり、第1四半期として過去最高を更新しました。一方、営業利益は207億円(同160億円減、△43.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は194億円(同35億円減、△15.4%)と増収減益の決算となりました。
減益の主因は、中東情勢の緊迫化に伴う燃油市況の上昇(シンガポールケロシンが前年同期間の81.4ドル/bblから182.5ドル/bblへ暴騰)や円安進行(145.2円から159.2円/USDへ)による営業費用(6,519億円、前年同期比+27.4%)の急増です。しかし、国際旅客の旺盛な需要と国際貨物の単価大幅向上により、期初に想定していた計画(営業利益△110億円の赤字予想)を大幅に上回り、+290億円の計画差(上振れ)を叩き出しました。

一方、日本航空(JAL)の2026年4~6月期における連結業績は、売上収益が5,237億円(前年同期比526億円増、+11.2%)と、ANA同様に第1四半期として過去最高を達成しました。本業の儲けを示すEBIT(財務・法人所得税前利益)は127億円(同328億円減、△72.1%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は53億円(同217億円減、△80.2%)となりました。
JALも同様に、燃油費が1,488億円(前年同期比548億円増、+58.4%)へ跳ね上がったことが利益を大きく押し下げました。しかし、国際旅客の機動的な運賃値上げや燃油サーチャージによる価格転嫁、さらにはマイル・金融事業などの非航空領域の利益貢献により、100億円超のEBIT黒字を着実に確保しています。
両社の決算実績を比較すると、ANAが売上高6,700億円超という圧倒的なスケールとNCA(日本貨物航空)連結効果による増収パワーで計画を大きく超えて見せたのに対し、JALは売上高5,200億円超の中で価格転嫁と非航空事業の稼ぐ力を駆使し、燃油高の直撃に耐え抜いて黒字を維持した構図が鮮明になっています。
セグメント・事業別に見る収益構造の違い

両社のビジネスモデルを解剖する上で極めて興味深いのが、収益構造(セグメント構成)の根本的な違いです。
ANAホールディングスの強みは、「フルサービスキャリア(FSC)+LCC+国際貨物」という航空本業におけるフルラインナップの圧倒的規模にあります。
航空事業の売上高6,208億円(営業利益181億円)の内訳を見ると、主力である「ANA国際旅客」が2,476億円(前年同期比+20.0%)、「ANA国内旅客」が1,636億円(同+1.1%)と着実に稼いでいます。特筆すべきは「国際貨物」で、売上高は1,087億円(同+157.2%)と前年比2.5倍以上に急拡大しました。これは前期第2四半期から連結化したNCA(日本貨物航空)のネットワーク効果に加え、旺盛なAI関連需要を取り込んだことによるものです。さらに、LCC事業を担う「Peach Aviation」も売上高357億円(同+22.0%)と好調を維持しています。

これに対し、JALの収益構造は「航空本業の不振を強力にカバーする非航空事業(マイル/金融・コマース)」の存在感が突出しています。
JALの事業セグメント別業績を見ると、燃油費急騰の打撃をダイレクトに受けたフルサービスキャリア(FSC)事業は売上収益4,202億円に対し、EBITは△8億円の赤字へと下落しました。また、LCC事業(ZIPAIR、SPRING JAPAN)も売上収益324億円に対しEBIT△1億円となりました。
この局面で圧倒的な稼ぎ頭となったのが「マイル/金融・コマース事業」です。同事業は売上収益563億円(前年同期比+13.3%)に対し、EBITは120億円(同+17.6%)を記録しました。全体の連結EBIT(127億円)のほぼ全額を、このマイル・金融・コマース事業単独で叩き出している計算になります。
両社を比較すると、ANAが「FSC旅客・NCAを加えた強力な国際貨物・Peachという航空領域の総合力で高水準のトップラインを稼ぐ構造」をとっているのに対し、JALは「高利益率を誇るマイル・金融事業が、燃油高で一時的に苦しむ航空本業を強力にキャッシュで下支えする構造」を構築していることが分かります。












